2019年度、公益財団法人お金をまわそう基金は休眠預金等活用法に基づく資金分配団体として採択され、3年間の事業を実施することとなりました。
実施が決まったのは、休眠預金と寄付を活用して、3団体と活動を行う「医療的ケア児と家族の夢を寄付で応援」というプロジェクトです。
具体的な内容としては、医療的ケア児と家族に安心して楽しい思い出をつくってもらうことや、ご家族が孤立することなく夢や希望をもって生活することができる社会づくりを目指し、NPO法人Lino、公益社団法人難病の子どもとその家族へ夢を、公益社団法人ア・ドリーム ア・デイ IN TOKYOと一緒に主に旅行支援のための活動を行って参りました。2023年3月の事業終了に向けて、改めて同テーマの意義と活動について振り返ります。
前編では、医療的ケア児とそのご家族にフォーカスしてお伝えしました。後編は、「インクルーシブな社会」についてご紹介いたします。
「出かける」ことの難しさ
多くの方にとってはあたり前の「お出かけ」が、医療的ケア児とそのご家族にとってはとてもハードルが高いものであるということは、まだあまり知られていないかもしれません。
令和元年に発表された三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の「医療的ケア児者とその家族の生活実態調査報告書」では、回答者である当事者の6割以上が「医療的ケアを必要とする子どもを連れての外出は困難を極める」という項目に対し「当てはまる」、「まあ当てはまる」と回答しています。
困難になる理由は様々ですが、「少しでも多くの方が医療的ケア児とそのご家族の存在を知り、彼らに必要なサポートが何かを知るだけでも、そのハードルを下げていくことはできるのではないか」。
そんな思いを胸に、実行団体の皆さんは、当事者への支援とともに、様々な関係者を巻き込みながら事業を実施してきました。
周りを巻き込み、体験を通して知ってもらう
NPO法人Linoの場合
例えば、障がいの有無に関わらず映画を楽しめる映画上映会を開催するNPO法人Linoには、当日映画館でお手伝いをするボランティアが沢山います。受付を手伝ったり、飲み物やポップコーンを運んだり…。ボランティアは若い世代が多く、大学生や若手社会人、中には小学生の子もいます。
同団体代表理事の杉本さんは、「若い世代が『医療的ケア児』と空間を共にすることはとてもいいことだと思っています。なぜなら、彼らにとって『医療的ケア児』が日常で当たり前の存在となり、相手を個人として尊重し、自然に手助けできるようになると思うからです。そういう人が増えると、インクルーシブな社会に近づくことができると思います。」と仰います。
映画館での活動を追った記事はこちら!
公益社団法人難病の子どもとその家族へ夢を の場合
公益社団法人難病の子どもとその家族へ夢を の浅草での活動に参加する人力車の車夫さんは、毎回10名強いらっしゃいます。
車夫さんの一人は、「最初は戸惑ったけれども、『どうやったら喜んでくれるか』と皆で考え工夫し、ご家族に喜んでもらえるととても嬉しかった。この経験が勉強になり、その後障がいのある方への接客にも生かすことができています」とのこと。
浅草での活動を追った記事はこちら!
インクルーシブな社会に向けて
医療的なサポートは、専門家でないとできません。ですが専門家でなかったとしても、「障がいがあっても楽しめる」場を作ったり、「障がいのある人がいても、気軽にお手伝いできる」人になることは、大きなサポートになるのではないでしょうか。
実行団体の皆さんが作った「医療的ケア児とご家族」との接点が、「共に生きるとはどういうことか」を考えるきっかけとなり、活動に関わった方々の意識が確実に変わっていくのを目の当たりにしました。このような活動の積み重ねが、「インクルーシブな社会」へとつながっていくのだと思います。
実生活で「医療的ケア児とそのご家族」と接点を持つ機会はあまりないかもしれません。
彼らの活動を通してこのような課題が社会にあるということを知り、ご家族や友人に共有していただいたり、活動する団体に寄付をしたり、あるいはボランティアをしたりして、「インクルーシブな社会」作りにご参加いただくきっかけになれば幸いです。