不登校・ひきこもり当事者の視点から生まれた「安心な居場所」~ネモネットのフリースクール~

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不登校・ひきこもり当事者の視点から生まれた「安心な居場所」~ネモネットのフリースクール~

団体が始まったきっかけや活動への思いを生の声でお届けすべく、助成先団体の代表者の方へお話を伺うShall we KIFU?代表インタビュー。

第4回は、千葉県でフリースクールネモを運営し、不登校やひきこもりの子どもたちに「安心な居場所」を提供している特定非営利活動法人 ネモ ちば不登校・ひきこもりネットワーク(以下、ネモネット)理事長の竹内 耕太さんにお話を伺いました。
ネモネットは、不登校やひきこもりを経験した方と不登校の子どもを育てた経験のある親が中心となってフリースクールを運営しているほか、相談事業も行っています。

 

活動のきっかけ

 

伊藤
現在、不登校やひきこもりを経験した方と不登校の子どもを育てた経験のある親が中心となって運営されているネモネットですが、その活動のきっかけは何だったのでしょうか?

 

竹内さん
20年ほど前、千葉県にはいくつかの不登校の親の会が存在し、親同士の緩やかな結びつきから派生して、その子どもたち同士も遊んだり交流したりしていました。
そういうつながりのある当事者たちが、2002年に千葉県内で開かれた「子どもの権利条約フォーラム」に参加して関係を深め、子どもたち自身が中心となってやりたい活動を形にするためにネモネットを立ち上げました。

 

伊藤
子ども同士のネットワークというと、当時は当事者の子どもたち自身も団体の運営に関わられていたのですか?

 

竹内さん

そうなんです。2004年にNPO法人となった時も、理事長は大人の方でしたが、理事の半分は10代の子どもたちでした。

不登校の子どもと不登校の子どもを育てる親が一緒に活動することで、お互いにそれぞれ別の苦しみがあることが分かります。
その上で、ネモネットは当事者である子どもの思いを一番に考えています。
今も両者が中心となって運営しているのは、子どもの意思を大切にして、親に子どもの苦しみを理解してもらいたいという設立時からの想いがあるからです。


ネモネットのスタッフと理事の方々

 

活動のやりがい・理念

 

伊藤
活動するうえでどんなことにやりがいを感じますか?

 

竹内さん
ネモネットは理念として、「本人の意思を第一に尊重し、学校への復帰を前提としない」「安心できる自由な居場所作り」などを掲げています。
その理念に共感しているので、それに沿った活動ができることにやりがいを感じます。
「ネモ」はラテン語で「誰でもないもの」を指す言葉です。
「ネモネット」の名前には、
「その人がどういう立場や境遇かということは関係なく、その人はその人である。その人らしく生きられることこそが大切だ」
という想いが込められています。
学校など、集団には必ず「その集団に居づらい」と感じる人が出てきますが、そういった人たちにとってネモネットが「その人らしく過ごせる安心な居場所」だと感じてもらいたいと思い、活動しています。

 

フリースクールネモでの活動と子どもたちの変化について

 

伊藤
フリースクールを運営するうえで心がけていることを教えてください。

 

竹内さん
当事者である子どもたちと同じ目線であることを心がけています。上から何かを提案して押し付けるのではなく、子どもたちの内から出るものをくみ取るようにしています。

 

伊藤
フリースクールで過ごす中で、子どもたちの変化を教えてください。

 

竹内さん
フリースクールでは子どもたちに好きなことをしていいと言っていますが、そう言われても最初は何をしていいのかわからない子がほとんどです。
それでも、関わり続けるうちに、やがて自ら企画を立てる子が出てきます。
好きなことができるネモだからこそ積極的に話すことができるようになる子もいますし、皆がそうならなければいけないわけでもありません。
スタッフや仲間たちと過ごすことで、消極的だった子までフリースクールにいることでやりたいことができるようになり、生き生きとしてくるのが大きな変化です。
辛そうな顔で入ってきた子が、生意気な態度で接してくれるようになるのがすごく嬉しいですね(笑)。

ネモネットでは、竹内さんをはじめとした大人たちが子どもたちの話を同じ目線で聞いてくれます。
相談する側も好きなことの話から真剣な悩みまで、友達や先輩に話すような感覚で話せます。

 

保護者と理事の関わり

 

伊藤
フリースクールに通うことで、子どもたちが主体性を取り戻し、やりたいことを自ら選び取る生き方ができるように変わっているのですね。
保護者の方へのサポートについても教えてください。

 

竹内さん
ネモネットの理事には保護者の方にとっていわば先輩と言えるような、不登校の子どもを育て上げた経験のある人が多くいます。
経験のある理事が相談に乗り、過去の成功・失敗した経験を現在苦しんでいる保護者の方に共有する形でサポートを行っています。
その結果、子どもへの接し方が少しずつ変わっていき、親子がよりよい関係になっていくのを見るのは嬉しいですね。

親世代の理事は皆不登校の子どもを育てた経験があります。
いくつもの経験談を聞くことで、保護者は子どもにとって最適な関わり方を模索することができます。

 

活動の課題について

 

伊藤
活動をする上で課題だと感じることはありますか?

 

竹内さん
ネモネットの「本人の意思を第一に尊重し、学校への復帰を前提としない」という理念が理解されにくいことが課題だと思っています。
相手が学校に居づらい子どもたちだからこそ、学校のように何かのプログラムを一律にやってもらうということはしないように心がけていますが、その大切さが不登校の経験のある人以外にはなかなか伝わりません。
フリースクールで子どもたちが好きなことに取り組み、のびのびとした様子に変わっていくのを見ることで、それまで消極的に子どもを預けていた保護者の方も理解してくれるようになります。
また、運営の面では、フリースクールに公的支援がほとんどないことも問題です。
通っている子どもたちの会費だけでは足りず、理事による持ち出しが必要な場面もあります。

 

今後挑戦してみたいこと

 

伊藤
最後に、竹内さんが今後ネモネットで挑戦してみたいことを教えてください。

 

竹内さん
フリースクールネモに通う方の年代は幅広く、巣立っていった不登校経験者も多くいます。
そんなOB・OGが気軽に集まり、後輩にもその背中を見せられるような、より大きな「居場所」にできるといいなと思います。
また、ネモネットについて、もっと外に発信していき、活動をより多くの人たちに知ってもらいたいと思っています。

 

伊藤
竹内さん、お話ありがとうございました!先輩の背中を見ることで、後輩も未来を前向きに考えられそうですね。

 

**編集後記**

当事者視点での「安心できる居場所」作り、そこで子どもたちが主体性を取り戻していく様子が竹内さんの実直かつ丁寧な語り口から伝わってきました。
子どもたちは「安心できる居場所」だからこそ、しっかりと自分の人生を選び取り、歩んでいく準備ができると考えられます。
フリースクールに通う中で子どもたちが立ち直り、やりたい企画を周囲の仲間たちと協力して実現する様子は、ネモネットのSNS(FacebookInstagramTwitter)でも発信されています。

社会では様々な経歴の人が各分野で活躍しており、自分の選び取った舞台で自分の望む形の働き方・生き方ができるように社会自体が変わってきています。
変わりつつある社会に対して自分のあり方を決める上で、ネモネットで本当にやりたいことを見つけて実現することは、学校の決められたプログラムの中で育った子どもたちには得難い経験とも言えます。
理解してもらいにくい活動ということですが、私たちもネモネットの活動の様子を発信していき、より多くの方にこの活動の大切さを伝えていきたいと思います。

ネモネット 公式ホームページ
「不登校Q&A」や「不登校なるほどコラム」が充実しており、
不登校の子どもと親の様々な不安に応えてくれる内容です。
不登校の子どもたちに寄り添った団体の姿勢が伝わってきます。
また、ネモネットは現在寄付募集を行っています。
皆様の温かいご支援を何卒よろしくお願いいたします。