重症心身障害児とは
「重症心身障害児(重心)」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。
重症心身障害児は、 重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態にある子どもを指します。
重症心身障害児(者)の数は、人口1万人あたり3〜9人(数字の幅は地域差および障害状態の幅による)と推計されています。また、児童期では児童1,000人につき1~1.5人が重症心身障害児といわれています※1。
※1 2014年度「重症心身障害児(者)への支援について」公益社団法人日本重症心身障害福祉協会より
重症心身障害児の発生数は、医学・医療の進歩充実に伴い、減少するよりもむしろ増加傾向にあります。 超低出生体重児や重症仮死産など、かつては救えなかった「いのち」が救命できるようになったことが大きな要因と考えられています。
わいわいくらぶの子どもたち
暮れも押し迫った2022年12月のとある火曜日、都心から60分ほどの「武蔵五日市駅」(JR五日市線の終点)に降り立ちました。これから「わいわいくらぶ」に向かいます。
「わいわいくらぶ」は「特定非営利活動法人秋川流域生活支援ネットワーク」において、秋川流域※2で唯一、重症心身障害児の放課後等デイサービスを行っている事業所です。
放課後等デイサービスとは、障害を持った学齢期の子どもが放課後や長期休暇中に利用できる福祉サービスです。子どもたち一人ひとりに合わせた療育とともに居場所づくりや保護者支援が行われています。特別支援学校の学区域6市町村において同様の事業所は未だありません。
※2 東京都あきる野市、日の出町、檜原村
目の前に小高い山が迫る駅前のロータリーにわいわいくらぶの管理者 庄子豪朗さんと事務局の横野遼平さんが車で迎えに来てくださいました。
わいわいくらぶへの道路は、夏になると秋川沿いのバーベキュー場やキャンプ場に向かう車で大渋滞するのだそうです。今は夏の喧騒が信じられないような静けさ。
ゆるい坂道を上っていく車の窓には、生活に密着した商店街と緑豊かな景色が広がり、庄子さんと横野さんの穏やかな話し声と相俟って、気持ちがゆるゆると癒されていきます。
10分ほどで秋川流域生活支援ネットワークの事業所「ぱずる」に到着しました。「ぱずる」は2020年9月に完成。わいわいくらぶを含む3つの事業所が集まっています。
わいわいくらぶに入ると、学校から到着したばかりの子どもたちがいました。子どもたちはみな地域の特別支援学校に通っており、授業を終えたらわいわいくらぶにやってきます。
この日デイサービスに来たのは5人。2020年1月にわいわいくらぶで会ったお子さんたちがいました※3! 約3年ぶりの再会です!
みんな驚くほど身長が伸びています。来年の4月から中学生になる子たちは、あどけなかったお顔が少年少女のそれになりつつある。大切に大切に育まれた「いのち」の成長にただただ感動します。
※3 「ぱずる」に越してくる前のわいわいくらぶは秋川駅近くのアパートの一室で放課後等デイサービスを行っていました。
当時の様子はこちらから → https://okane-kikin.org/information/2206
学校や家庭からの申し送りを全員で共有し、支援員・医療職(看護師・理学療法士)などのスタッフがそれぞれの専門性を活かしながら、ほぼマンツーマンでお子さんたちの介助に当たります。
おやつは「食の楽しさ」を知ってもらうための大切な時間です。介助するスタッフは、誤嚥を防ぐために口周りや口の中を丁寧にマッサージしてからスプーンを使い始めました。また、別のスタッフはお子さんの気が散らないよう、常に声がけをしながらタイミング良くおやつを口に入れていきます。
体温調節が苦手な子どもたちのために、室温は少し高めに設定されています。お子さんの体を優しく慎重にリハビリ(マッサージ)するスタッフの額には汗が光っています。自身で動かすことが難しい全身のメンテナンスは非常に重要で、特に関節などを柔らかく保ち、可動域を狭めないようにすることはとても大切なのだそうです。
きめの細かいケアを行いながら、スタッフはみな子どもたちの様子をつぶさに観察し、小さな変化も見逃しません。少しでも気になったことはスタッフ同士で共有し、ご家庭にもお知らせしています。
わいわいくらぶでは、重い障害であっても、人格や意思を尊重した関わりとそれぞれが持ち得る方法でのコミュニケーションを大切にしています。わいわいくらぶの子どもたちは全身で意思を示します。表情もとても豊かで、特に笑顔の多さはこちらまで幸せな気持ちになるほど。わいわいくらぶで過ごす時間が、いかに愛情で満たされているかがわかります。
「家庭支援」という側面
重症心身障害児(者)の生活においては、ほぼすべてに「全介助」を必要とします。日常生活で身を委ねている身近な存在は、そのほとんどが「家族」です。その中でも最も介助を必要とするのが「入浴」だといわれています。
わいわいくらぶでは家庭支援の一環として、スタッフ2名体制で入浴サービスを提供しています。
管理者の庄子さんからお話を伺いました。
■入浴は「わいわいくらぶ」さんならではのサービスだそうですが、なぜ始められたのですか?
「わいわいくらぶ」は、放課後の余暇時間を楽しく過ごす場所であり、ご家族の負担を軽減する場所でもあります。
子どもの生活の多くがご家庭の負担によって成り立っているなかで、入浴サービスを受けられることはご家族にとって大きな負担軽減となります。
そのため「わいわいくらぶ」ではご家庭からのニーズが高い入浴サービスを行っています。リフトなどの設備やスタッフ2名体制を整えた環境で、安全に入浴していただいています。
この地域ではまだ訪問看護などの福祉サービスが十分に整っていません。入浴サービスには人手が必要であり、特に体が大きい中高生を入浴させるのはかなりの重労働になります。
療育施設である放課後等デイサービスで、生活介護である入浴支援をすることに賛否はありますが、地域における使命と捉え今後も継続していきます。
入浴を終えたお子さんが可愛いパジャマに着替えて戻ってきました。スタッフが早速髪を乾かします。
たしかに入浴と着替えが済んでいたら、子どもが帰宅した後のご家族の負担はずいぶんと軽くなるでしょう。ニーズが高いのも頷けます。
しかし、入浴サービスも含め、事業の継続には課題があると庄子さんは言います。
■「わいわいくらぶ」の事業を継続していくためにはどのような課題がありますか?
放課後等デイサービスは重症心身障害の子どもやそのご家族にとって、大きな助けとなる事業です。
しかし、サービスを必要としてるご家庭が多いにもかかわらず、採算をとることが難しいため事業者はなかなか増えません。
採算をとるのが困難な理由として、「看護師など人件費の高い医療職の配置が必要」「体調の維持が難しい子どもを対象としているため急なキャンセルが多い」などが挙げられます。
キャンセルの連絡は直前に入ることがほとんどのため、事前にスタッフの人数を調整することが難しく、そのための人件費が運営費を圧迫しています。
事業の継続のためにも、重症心身障害児やそのご家族のさらなるニーズに応えていくためにも、人件費と人材を安定して確保していくことがわいわいくらぶの課題です。
わいわいくらぶの一番の評価は「子どもたちの笑顔」です。
日頃からご支援くださっているみなさまには心から感謝しております。
今後も多くの方から応援・ご支援をいただけますようよろしくお願い致します。
ご支援のお願い
わいわいくらぶでは子どもたちの安心と安全を第一に、ご家庭と密に連携をとり活動を進めています。
質の高いサービスを提供するためには、人材と人件費の確保が必須です。
みなさまからのご寄付は、全額をわいわいくらぶの運営費(人件費)に充てさせていただきます。
支援力の向上により、子どもたちにより良い環境で充実した時間を過ごしてもらうことができ、よりスキルの高い職員が確保できていることでご家族にも安心していただくことができます。
みなさまには、わいわいくらぶが地域のニーズに応えられるようご賛同いただければ幸いです。
これからもたくさんの子どもの笑顔が見られますようご協力ください。
よろしくお願い致します。
・いただいたご寄付は全額をわいわいくらぶ(秋川流域生活支援ネットワーク)にお届けします。
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