
団体が始まったきっかけや活動への思いを生の声でお届けすべく、助成先団体の代表者の方へお話を伺うShall we KIFU?代表インタビュー。
第7回は、NPO法人子育てサロンすくすく理事長の添谷京子さんにお話を伺いました。
NPO法人子育てサロンすくすく(以下、すくすく)は、子育て世帯が流入する江東区で、実家から離れて暮らすことになった核家族など、子育てに不安を持つ家庭を中心に子育て支援を行っています。
添谷さん自身の育児経験や保育士時代の経験が活動に深く結びついていることや、団体の掲げる「親育ち」による親御さんたちの変化など、詳しくお聞きました。
地域に助けられた育児経験


そんな中で手を差し伸べてくれたのが地域のおばさんです。夕飯を分けていただいたり、育児について一つ一つアドバイスをいただき、安心して子育てと仕事を両立させることができました。
それは他のスタッフも同じで、皆核家族のため身近に両親や身内がいない中で地域のおばさんたちに助けてもらっており、そういった経験や地域へのお返しの気持ちが今の私たちの活動につながっています。


すくすくは、地域のおばさんに代わって「地域で子育てを支えよう」という思いで活動しています。
すくすくの子育てサロンの近くにあるスーパーマーケット付近の様子
道路の両側にマンションが立ち並び、買い物中の親子の姿を見かけることも多い
保育士時代の経験とNPO活動


実際に、基本的な子育てに関する冊子を作って配布し、子どもの姿を見せながら地域の親御さんたちに説明したところ、想像以上に喜ばれ、私もこうした活動の必要性を感じました。
地域の子育ての状況を知り、また、虐待が社会問題化してきた背景もあり、かつて自分が助けられたように、保育園の外でも地域の子育てを助ける活動をしたいと思いましたが、在職中は時間の余裕がありません。
そこで、保育園を定年で退職した後、同じ思いを持った仲間と共に週に1回の子育てサロンを始めました。


「活動を継続していくためにはしっかりとした組織であったほうが良い」と周囲から助言をいただき、活動9年目を迎えた頃に、NPO法人となることを決めました。
すくすくの子育てサロンの特徴


今の時代、自分の子どもが生まれるまで赤ちゃんに触れる機会がない方が多くいます。
その上、地域とのつながりの薄い今の核家族の家庭では、子育てについて地域の方を頼りにするのは困難です。
そういった状況の中でも、専門家の常駐する子育てサロンに来れば何でも気軽に質問でき、子どもがどう発達していくのかについても知ることができます。
それまで子育てに不安を抱えていた親御さんも、こちらから子どものちょっとした成長を伝え、それを共に喜び合う中で、やがて自信を持って子育てできるようになります。


例えば、子育てサロンでのメインの活動である「親子の遊び場」では、親子がおもちゃを通して関わりあい、愛着を深めていけるように、近くで見守り、親子の遊びをそっと支えるようにしています。
「親育ち」が生む助け合い


親同士のつながりも生まれて、お互いに助け合うようになるのが特徴です。
例えば、ある親御さんがトイレなどでその場を少し離れて戻ってきたときに、他の親御さんが「こんなことがあったよ」とその間のお子さんの様子を伝えてあげるなど、ちょっとしたことから助け合いが生まれていきます。

今後の目標


親御さんから、「周囲に頼る相手がいない」という声や、「すくすくに来て気持ちが楽になった」という声をお聞きすることが多くあり、活動を始めた時には思っていなかったほど、こうした活動が求められていることを実感しています。
地域の親子がこの先も安心して子育てできるように、設立当初の熱意のまま活動し、しっかりと組織の体制を整えてスタッフの世代交代もできるように努力していきます。

身近に頼る相手のいない親子のために、ぜひこれからも活動を続けていってください!
子育てサロンを利用されている親御さんからの声
実際にすくすくの子育てサロンを利用されている山本さんにも、子育てサロンを利用されるようになったきっかけや、利用される中で感じられていることについてお伺いしました。




東京には妊娠5か月のタイミングで移住し、近くを散歩していた時にたまたま子育てサロンを見つけました。
親も友達も身近にいなかったので、とにかく話す場と友達が欲しいと思って出産したら行こうと決めていました。

そんな山本さんにとって、すくすくの子育てサロンのどういったところが魅力に感じられましたか。

例えば、どこの施設でも責任などの問題でおもちゃの持ち込みは禁止されていることが多く、それはすくすくでも基本的には同じです。
しかし、実際に家を出る際に子どもからおもちゃを取り上げようとすると、そこでひと悶着が起こってしまうことが予想できます。
そのため、すくすくではそこまで汲んで、子どもがおもちゃを手に持っているときは特別に持ち込みを許可してくださり、子どもの興味が他に移ったタイミングでおもちゃを別に保管してくださっています。
すくすくの皆さんが経験豊富で、こちらの気持ちを第一に考えてくださるからこその対応だと思います。堅苦しくないところがとても魅力です!

それでは最後に、すくすくの皆さんについても一言お願いします。

周りに頼れる相手がいない中、本当に頼りになる存在です。
様々なことで気軽に頼りにさせてもらい、いつも助けられています!

すくすくの皆さんの気持ちがちゃんと親御さんに届いていることが、山本さんのお話の端々からしっかりと伝わってきました。
お母さんと添谷さんの手を借りながら大作に挑んでいる山本さんの長男のしょうちゃん
編集後記
少子化が進んでいる中で、東京への一極集中も続いており、すくすくが活動している江東区の人口も増え続けています。(※)
年少人口には微減傾向が見られますが、それでも山本さんのように、地方から頼る相手がいない状態で転入される親子がこの先も多くいらっしゃるはずです。
そうした状況の中、親子が孤立しないように寄り添うすくすくの活動は、今後も大きな意味を持ちます。
すくすくの進める「親育ち」により、親同士でも子育てを助け合う優しい輪が広がっていき、子育てを皆で支える地域が生まれることを願っています。
※江東区データブック2023 総論 p.2より
子育てサロンすくすくの事業については、以下をご覧ください。
(皆様の温かいご支援により、2023年度の事業への寄付は目標額に到達しました。)