だれでも旅行を楽しめるように ~Linoツアー2021 in USJ~

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だれでも旅行を楽しめるように ~Linoツアー2021 in USJ~

11月の中旬にNPO法人Linoが行った、医療的ケア児とその家族などを対象とした1泊2日のユニバーサルスタジオジャパン(以下USJ)ツアーに私たちお金をまわそう基金も同行させて頂きました。 

この旅行に同行することで今までとは異なる目線から色々なものを見ることができ、気付かされることが色々とありました。今回のブログでは、そうした気付きを中心にまとめていきたいと思います。 

なお、今回の旅行をもとにLinoの代表の杉本さんが「みんながお出かけを楽しむためのブログ♪」を書かれています。旅行の準備段階からの出来事を失敗談も交えながら楽しくまとめられていますので、是非あわせてご覧ください。 

みんながお出かけを楽しむためのブログ♪ 

 

Linoのツアーとは?

医療的ケアが必要な子どもや障害のある子どもがいるご家族の中には、自分たちだけで旅行に出かけることに不安を感じる方が少なくありません。Linoでは、そんなご家族がサポートスタッフや他のご家族と一緒に旅行することで新たな体験をし、挑戦することへのハードルを下げるためのツアーを2019年から開催しています。 

例年は沖縄での2泊3日の海洋リハビリ体験ツアーを行っていますが、4回目となる今回は新型コロナウイルスの影響で大阪へのUSJツアーとなりました。Linoとして初めて新幹線を利用するツアーです。 

今回参加したご家族は5組、どちらも車いすの子どもと一緒です。そこに医療的ケアなどに対応できる看護師5名と介護士2名、ボランティアのカメラマンとお金をまわそう基金の2名が加わり、総勢23名の大所帯となりました。

 

 東京駅から新幹線に

東京駅の新幹線ホームにて

東京駅の新幹線ホームにて

出発当日は、東京駅に朝の630分に集合しました。子どもたちの乗っている車いすは、それぞれの体格や症状に合わせて形状もサイズも全く異なります。しかし共通しているのは、どちらの家族も大きな荷物を背負ったり車いすに積んだりしていることです。予めホテルに荷物は送っているそうですが、痰の吸引器やペースト食など携帯しないといけないので荷物はどうしても大きくなってしまうとのことでした。 

早朝ではありますが、駅の構内は通路が狭く人も多いため、移動しにくい印象を受けます。また、多目的トイレも経路上に1つしかなく、エレベーターも大型の電動車いすだと1台しか乗れないため、時間にゆとりを持った計画が必要です。 

 

 新幹線で いざ大阪へ!

新幹線が到着すると、駅員さんにホームと列車の間にステップを置いてもらい順次車内に乗り込みます。乗り込む際もサポートスタッフが荷物を分担して持ったり先導したりと忙しく動き回ります。狭い車内で車いすを操作しながらそれぞれの席に移動していきます。

予約した車両はベッドのある多目的室と2台分の車いすスペースが設置された車両です。車いすスペースは車いすに乗った二人が利用し、多目的室は品川駅から合流する家族が利用します。残り2台の車いすは子どもを座席に移乗させたあと折りたたみました。網棚をみるとそれぞれの持ち物で一杯になっていました。 

この日はとても天気が良く、品川駅を出たところで富士山をくっきりとみることができました。車内では参加者が食事をとったり眠ったりとリラックスした時間を過ごしていました。看護師や介護士の方は、東京駅や乗車の際の反省から降車から福祉タクシーとの待ち合わせ場所までの手順や経路の確認を行いつつ、トイレの付き添いや痰の吸引などもこなしていました。 

回同行してくれた看護師や介護士の方は、Linoの代表で看護師でもある杉本さんの元同僚が中心です。チームワークが抜群で状況に合わせて臨機応変に行動するとても頼もしい存在でした。 

新幹線が京都駅を出ると一斉に降りる準備を始めます。新大阪駅までの15分ほどの間に、荷物をおろしてパッキングしたり、たたんでいた車いすを組み立てたりなどてきぱきと準備が進んでいきました。 

 

新幹線から福祉タクシーに

新大阪駅で降りるとエレベーターを使って、ホテルまで運んでもらう福祉タクシーとの待ち合わせ場所に移動します。タクシーに乗っていざ出発と思ったところ、一部の車いすが乗り切れないというアクシデント。タクシーは旅行代理店を経由して依頼していたのですが、お願いしたサイズと違う車が来ていました。

ご家族やスタッフ、運転手さんの臨機応変な対応と、ゆとりをもって4台の車を頼んでいたことが功を奏して、何とか全員車に乗り込み出発。40分ほどかけてUSJ近くのホテルに無事到着しました。ホテルに荷物を預けて、いよいよUSJに向います。 

 

いよいよUSJ

USJでは、一家族ごとに担当の看護師や介護士がついてチームを作り、行きたいアトラクションを回ります。私もK君とご両親、介護士の方と一緒にUSJを回ることになりました。テーブルと大きめのヘッドレストが付いた車いすに乗るK君は、今回が初めてのUSJです。ベージュのキャスケットにチェックのシャツ姿がとても良く似合っています。 

最初にK君一家が向ったのは、入り口近くにある救護所でした。K君はペースト食を食べるのですが、その際に誤嚥防止のために側臥位で食事をします。そこで救護所のベッドを使って食事をさせてもらえないか、ペースト食を出しているレストランからテイクアウトできないかを聞きに来ました。 

窓口の方がこちらの要望を丁寧にヒアリングしてくれます。あまり経験のないケースのようで、2、3度追加のやり取りをしたのち責任者の方があらわれ対応してくれました。救護所は乗り物酔いの方が来ることが多いため、食事など匂いの出ることの対応は難しいそうですが、今回は特別に風通しの良い場所のベッドを使わせてもらえる事になりました。ペースト食については機材の消毒などが有るため直ぐには用意できないとのことで、ご家族が用意していたレトルト食品を食べることになりました。旅行の最大の楽しみの一つである旅先のご飯を食べるということが、こんなにも大変な事なのかと感じました。 

窓口の方や責任者の方との交渉は、主にお母さんが行っていました。また、待っている間にはファミリーレストランのペースト食の持込への対応がどの様に変化してきたかを色々と話してくれました。そうした様子から、お母さんがこれまでK君と外出する先々で同様の交渉を繰り返してきただろうことが伝わってきます。 

 

外出で一番大変なことは?

 

2020年にLinoが医療的ケアや障害のある子どもを持つご家族にアンケートを行いました。その中に、余暇に外出をするというご家族に「外出する際に大変な事は何か」と尋ねたところ、一番多かった回答が「トイレ」でした。130件の内79件と6割のご家族が選択しています。 

K君のご両親も、外出の時は食事とトイレの事が一番気に掛かるそうです。他の参加者も同様らしく、USJに入ってすぐにグループLine上でベッド付きのトイレの情報や写真が共有されていました。 

K君もインフォメーションセンターで配られているサポートブックを見ながらベッド付きのトイレに向いました。トイレにつくとベッド付きのトイレには先客があり、しばらく待ってからお父さんがK君を連れて中に入っていきました。 

ベッド付きトイレは、男性用トイレに入ってすぐのところに設置されています。お母さんによると、「当然、男性用トイレに母親が付いていくのは抵抗がある。ただ限られたスペースで、女性トイレに併設して父親が付き添えなくなるよりは良いということではないか」と教えてくれました。 

トイレに入ったK君とお父さんは5分10分と経ってもなかなか出てきません。途中で車いすに乗った子どもとお父さんが来ましたが、少し待って立ち去ってしまいました。お母さんが心配して声を掛けると中から大丈夫と返事。少しして出てきたお父さんに話を訊くと、便器の横の手摺が邪魔でベッドに車いすを横付けできず移乗に苦労していたとのことでした。 

 K君は身長が155㎝、体重が33㎏あります。「子どもが成長する一方で親は年を取っていく。今はまだいいけど将来の事を考えると不安はある」とつぶやくように話してくれました。 

 

はじめてのアトラクション♪

お昼ご飯を終えていよいよアトラクションに向います。サポートブックを見ながら車いすのまま楽しめそうなシング・オン・ツアーを観ることにしました。このアトラクションは映画『SING』の登場人物たちがステージで歌ったり躍ったりする楽しいステージです。 

会場に入り、事前に係の方から説明された車いす席に進みます。車いすスペースは車いす3台くらいが止められる広さですが、この時 車いす席を利用したのはK君だけでした。介助者は車いす席で一緒にステージを観ることはできず、通路を挟んで斜め後方の席から観ることになっています。お母さんは隣についていたいと頼んでいましたが、それは出来ずお父さんと後方から見守っていました。

少し離れた私の席からは、K君の表情は見えませんでしたが、歌やダンスに合わせて手を動かし楽しんでいるように見えました。 

シング・オン・ツアーを鑑賞したあとは、テーマパーク内を散策しました。人が多かったり道がデコボコしていたりしましたが、お父さんが車いすを押しながらのんびりと進みます。途中でK君の大好きな帽子や被り物のお店に立ち寄りました。お父さんが選んだ帽子を幾つか試着させ、迷いに迷った末にミニオンズの帽子を購入しました。 

USJ内をぐるっと回った後、最後にお土産物を売るお店を巡りました。お母さんが買い物をしているあいだ、お父さんはK君と店内を見て回ります。 いくつかの店を回る際に気になったのは道の段差です。

お土産物屋の集まるエリアの道は、街中の道路と同様に、車道と車道より一段高くなっている歩道に分かれています。そこを歩行者天国の様に来場者が歩いているのですが、目の前に気になるお土産屋さんがあっても車道にいると車いすでは段差があるためにまっすぐお店に向うことができません。交差点のスロープになっているところから歩道に上がり店頭に戻ってくる必要が有ります。

車いすを押すお父さんは特に何も言いませんでしたが、人ごみの中でかなりの距離を行って戻る姿を見ると、スロープを増やすなどの対応はできないものかと感じます。 

 

まとめ

買い物を終え、集合場所で他の家族を待ちながらK君のご両親と話をするなかで、「今回LinoのツアーのおかげでK君とUSJまでこれて本当によかった。次回旅行をするときは、もっと下調べをしっかりして行こうと思う。」との言葉がありました。 

看護師や介護士の方が同行してくれるLinoのツアーは、これまで旅行をしていなかったご家族が旅行に出かける大きな後押しになっていることが分かります。そして実際に旅行に参加して他の家族と接することで自信が深まり、「また行きたい!」「こうすればもっと楽しめたんじゃないか?」と前向きに挑戦する原動力になっていることを実感できました。

また、障害のある子どもの体格や症状によって、楽しめるアトラクションや食事の種類、必要なサポートは異なります。貴重な時間を思い切り楽しくすごすためにも、予め訪問先に対応の確認や相談をしておくことはとても大切です。 そうした確認や相談が集まることで受け入れる側の態勢が整備され、必要な情報を得やすく、サービスや施設も利用しやすくなるのではないかと思います。  

後日、12月上旬にディズニーランドに行ってきたというK君一家と、その直後に行われたインクルシネマの会場で再会しました。今回は事前準備をしっかりしたことでより楽しめたと笑顔で教えてくれました。 

今回のような旅行に参加するご家族が増え、より多くの方が関わるようになることでより快適に旅行できる環境が整えられていく。そして更に幅広いご家族が旅行に行けるようになる。そんな相乗効果を生む力を、Linoさんの事業から感じました。 

 ※ブログに使わせて頂いた写真の多くは、ツアーに同行してくれた フォトグラファーイシヅカさんの写真をご厚意で使わせて頂きました。ありがとうございます。

 ~ご支援のお願い~

お金をまわそう基金では、NPO法人Linoへの寄付を受け付けています。

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