超贅沢なさわかみアラカルトコンサート
10月8日(金)神戸市の松方ホールで、公益財団法人さわかみオペラ芸術振興財団(以下、さわかみオペラ財団といいます)主催の「超贅沢なさわかみアラカルトコンサート」が開催されました。
オペラ歌手による歌だけでなく、弦楽四重奏や木管五重奏、さらにはオペラと楽器のアンサンブルまで聴くことができる、まさに「超贅沢な」コンサートです。
演奏される楽曲は誰もが聴いたことのあるイタリア音楽や世界各地の不朽の名作などで、オペラやクラシックに馴染みのない方でも本格的な演奏が楽しめる珠玉のプログラムです。
クリエイトの子どもたちが「さわかみオペラアラカルトコンサート」へ
このコンサートに、さわかみオペラ財団の招待で、お金をまわそう基金の助成先団体「特定非営利活動法人クリエイト」(以下、クリエイトといいます)の子どもたちが参加しました。
クリエイトは香川県さぬき市で不登校の子どもや海外からの子どもを対象にフリースクールを運営しています。
子どもたちがその後の人生において充実した日々を過ごしていくために、一人ひとりに合ったカリキュラムを策定し、より良い経験を積み重ねることができる学び舎として、現在13名の小中学生を受け入れています。
活動の様子はこちらから↓
コンサート当日。抜けるような青空のもと、子どもたちはやってきました。この日参加した子どもは4名。2時間半の移動の疲れも見せず、でもちょっと緊張気味に会場に入って来ました。
子どもたちを引率してきたクリエイトの理事 多田洋美さんが嬉しそうに話してくれます。
子どもたちはクラシックのコンサートを聴くのが初めてなんです。素晴らしい機会をいただき本当にありがとうございます。
コロナ禍でどこにも出かけることが出来なかった子どもたちにとって最高の経験、最高のプレゼントです。
プログラムを手に着席する子どもたち。ステージの奥からは楽器の音がかすかに聞こえてきて、いやがうえにも期待が高まります。
ただ、クラシックのコンサートって眠くなったりします。大人だって知らない曲の演奏が延々と続いたりすると、睡魔の方が間違いなく勝つ。いわんや子どもたちをや。
コンサートは弦楽四重奏から始まりました。眠くないかな?子どもたちの様子をチラ見。お行儀よく神妙に聴いています。楽器の生の音の迫力に少し圧倒されているのかもしれません。その横顔が可愛らしい。
「G線上のアリア」が始まると、少し前のめりになって聴き入っている子どもがいます。きっと知っている曲なのでしょう。音楽の世界に入り込んだ小さな魂が喜んで駆け回っているように見えました。
「ふるさと」
日本の名曲「ふるさと」。前の方の席に座っているお客様の何名かはこの辺りで涙腺崩壊。でも子どもたちの反応はさほどでもありません。
確かに子どもの頃に「ふるさと」を聴いても感動しませんでした。大人にとっての「ふるさと」は郷愁を誘ったり、日本人で良かったと思わせたりする最強アイテムですが、この感覚は年齢を重ねないとわからないもの。
思わぬところで、自分がすっかり大人になってしまったことを思い知らされたのでした。
とはいえ、オペラ歌手の歌声を聴くのは初めての子どもたち。特にソプラノの相樂和子氏の歌声には衝撃を受けたようで、思わず背筋を伸ばすのでした。あの高音、あの声量、あの美声、そしてあの美しさ。子どもたちの目は釘づけです。
「お前が投げたこの花を」「お聞きください 王子様」「もう飛ぶまいぞ この蝶々」と曲が続くと、和訳の歌詞カードを読みながら聴き入ります。
子どもたちは感動するもの、興味のあるものに実にストレートに反応します。目の前で歌われている曲の意味を知りたいと思う気持ちが、こちらにまっすぐ伝わってきます。オペラの楽しさが届いていますように…とひそかに願ったのでした。
特別な一日
休憩時間に入りました。「どうだった?眠くならなかった?」と聞くと、「うーん、やばいときもあったけど、それはほんのちょっと。」という素直なお返事。「おもしろい?」と聞くと大きく頷きます。
第二部は木管五重奏から始まります。ファゴット奏者の君塚広明氏のお話も楽しく、プログラムはつるつると進みます。
子どもたちがみな前のめりになったのは、歌とアンサンブルのコーナーです。弦楽四重奏、木管五重奏、ピアノの演奏に、オペラの歌声が重なる圧巻のステージ。
美しい音のみが存在する空間。その中で子どもたちはステージを見つめ続けます。その曲が、その調べが、子どもたちの特別な一日を作り上げていきます。
プログラム最後の曲「フニクリ フニクラ」では、会場が一体となって手拍子が鳴らされ、その手拍子は曲の終わりとともにアンコールの拍手へと変わります。
アンコールは椿姫の「乾杯の歌」。会場の雰囲気は最高潮に達します。
うねるような会場の空気に子どもたちも楽しそうです。もしかしたら、やっと緊張が解けてきたのかもしれません。非日常の世界に遊ぶ子どもたちの心が、ステージまで降りていくようでした。
破顔一笑
すべての演奏が終わったとき、一人の子どもが「おもしろかった!」と言いました。マスク越しでもわかる笑顔。まさに破顔一笑でした。
子どもたちに特別で最高の一日をプレゼントしてくださった、出演者のみなさま、そしてさわかみオペラ財団のみなさま、本当にありがとうございました。
この豊潤な時間が子どもたちの心のどこかに仕舞われて、何かの折に思い出してくれたら…。そんな思いで子どもたちの背中を見送ったのでした。
後日、多田さんから届いたメッセージをご紹介します。
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子ども達は本当に楽しかった様子で、帰りの車内でも饒舌に興奮気味に話していました。
とても素晴らしい機会をくださったことに感謝してもしきれません。
きっと「あ!あの時聞いた曲!」とか、「オペラの曲聞いたことあるよ。」とか、子ども達の記憶に残ったものがこれから豊かに運用されて、将来につながると思います。
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