本セミナーは終了しました
10月19日(火)、公益社団法人難病の子どもとその家族へ夢を の代表理事である大住力さんと、当財団代表理事の澤上篤人との対談会を行いました。久しぶりの対面セミナーには、天気が下り坂の寒い夜にも関わらず28名の方にご参加いただきました。
今回のセミナーは、昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちの仕事の仕方や価値観が変化していくなかで、働く意義やお金、豊かさなどについて改めて考えていきたいという思いから企画されました。
株式会社オリエンタルランドでテーマパークの運営管理や人材育成等に20年携わったのち、2010年に難病の子どもとその家族の応援を目的とした「難病の子どもとその家族へ夢を」を設立した大住さん。日本で初めての直販投信を販売し「カッコいいお金の使い方」を提唱するお金をまわそう基金の代表理事、澤上篤人。二人の対談は、情熱と思いの溢れる熱いものになりました。
大住力×澤上篤人 対談会
団体設立のきっかけになった、「Give&Give」について
澤上からは、さわかみ投信株式会社の経営理念の一つである「ギブ、ギブ、ギブ、ギブ、ギブ、とことんギブ。そしていつかは、ギブン」についてお話ししました。
働く意味や豊かさについて
大住さんからは、再度アメリカでのご経験からお話がありました。
「『ギブ・キッズ・ザ・ワールド』でボランティアにしていた時に『rich』という言葉の意味について考えさせられました。ある時、そこで知り合った人が『リキ、私はとてもrichです』と言ったんです。お世辞にも、お金持ちの装いをした人とは言えなかったのですが、『沢山の紙幣を持っていることが rich なのではない、rich はここにあるのだ。』と、その方はご自身の胸に手を当てました。
あとで調べてみると、『rich』には温かい、優しい、深いという意味があるんですね。『rich』イコール『お金』としか考えていなかった自分を、なんてイタいやつなんだと思いました。
その経験から団体を設立するまでに7年間悩みましたが、会社を辞めて実行に移しました。ディズニーで働いている自分が、『ミッキーに会いたい!』という難病の子どもの願いを、聞かないふりをするなんてできないと思いました。『お前がやらなければ誰がやるんだ?』という使命感、激しい思い込みもあったかもしれません。」
自分との向き合い方、社会の中での役割について
働いていく中で、自分とどのように向き合っていくか、社会の中での自分の役割をどう考えるか、という問いかけについて、澤上は仏教の言葉を引用して話しました。
「少欲知足という仏教の言葉が好きですね。欲を少なくして、足ることを知る、ということ。人間の欲は放っておけば果てしなく、どんどん金儲けをしたくなる。けれど、餃子とビールで嬉しい、楽しい、とささやかなことに幸せを感じることが大事なのではと思っています。社会や経済の変わり目である時代においては、誰かが踏み台にならねばいけない。俺の役割は、踏み台になることだと思っています。俺を踏み台にして、若者がどんどん上に登っていって欲しい。良い世の中を、求め続けて欲しい。ゴールと言った瞬間に終わってしまう。若者には、上を求め続けて欲しい。」
大住さんは、ディズニーで学んだことをベースにお話しされました。
「ウォルト・ディズニーは、『人の成長は常に振り子だ』と言っています。色々なスキルを習得しアウトプットしていくことも大事ですが、一方で「自分はどうなのだ?」という自問自答がとても大切だということです。
自分の人生を自問自答して振り返ってみると、その時はたいして大切に思えなかったことが、『あの時に経験できて良かった』と思えることがあります。自問自答を繰り返すことで、『何を大切にしたいのか』が分かったり、新しい自分を見つけることもできるのではないでしょうか。そういうことを、今の仕事を通じて学ばせてもらっていると思います。
本気で自問自答すれば、自分のやりたいことは見つかると思います。見つけたと思ったものが、『やっぱり違った』ということもあるでしょう。けれど、そうしたらまた探せばいい。私は病気を診ることはできませんが、人を喜ばせることはできるので、それが今の自分の役割かなと思っています。」
質疑応答
お金を稼ぐためには、好きなことを仕事にしてはいけない、お金のために我慢して働いているのですが、好きなことをしながらお金を稼ぐのは難しいでしょうか?
澤上:ちょっと冷たい言い方かもしれないけど、やりたいようにやればいいんじゃないか、と思う。
詐欺とかはダメだけど、どんな仕事にしろ、何かしら世の中の役に立っているはず。「仕事がつまらない」とかではなく、その仕事がどのように役に立っているかを見つけて、相手にもっと喜んでもらうためにはどうしたらいいか、と考えればよい。
例えば飲食店なら「美味しい」と思ってもらえれば嬉しいし、もっと美味しいと思ってもらうためには、もっと喜んでもらうためにはどうしたら良いか、を考えれば良いと思う。
難病の子どものご家族とのコミュニケーションに難しさを感じている。どのように距離感を取り、工夫していますか?
大住氏:ご家族が東京に来た際、朝ご飯ならここ、夜ご飯ならあそこ、など、自分のお勧めを色々考えて連れて行ったのですが、あるご家族を連れて行った際、食事しながらお母さんが寝てしまっていたんですね。一日ディズニーランドで子どもと過ごしたんだから、疲れて当然ですよね。その時、最高のレストランをご紹介したつもりだったのに、ご家族の状況を顧みずにこちらが一方的に勧めたいものをお勧めしてしまったことに気が付き、反省しました。お客様であるそのご家族のことを本気で考えていなかったんです。
あの時以来いつも思うのは、お客様は一人ひとり全員違うということ。相手によって「何を言って欲しいのか」を考えながらコミュニケーション方法を考えることが仕事の面白さだと思います。
ただ、ありきたりの言葉を伝えるだけではなく、本当にその人が欲しいという言葉を伝えたい。なので、ギリギリのラインを狙って時には失礼なことを言ってしまうこともあり反省するのですが、そうしないと伝えたいことは伝わらないのかなとも思います。
「難病の子どもとその家族へ夢を」で一番大切にしていることを伺いたい。
大住氏:当団体は色々なことをやっていて、一つには難病の子どもを抱える母親で結成した和太鼓団などもありますが、設立当初から行っているのはウィッシュバケーションという「2泊3日で非日常を味わう家族全員旅行」です。
「色々な人が声をかけてくる」「知らない人が子どもの名前を呼ぶ」などの非日常を経験することで、日常の良さが分かるようにしたいと考えています。
帰ってきたら、「やっぱりここがいいね」と感じつつ、ウィッシュバケーションを通して「社会も捨てたものじゃない、いい人がいるんだね」ということも感じていただき、日々のありがたみを噛みしめてもらえるような体験をして欲しいと思ってます。
参加者の方からのご感想
・登壇者の生の声を聞くことは、ネットでは分からない熱量を感じることができて、活動への想いや理解がより深まりました。
・大住さんの、「恩返しではなく、恩送り」という考え方は素晴らしいと感じました。恩送りが広まれば、格差を緩和することにもつながると思いました。
・今、自分が頂いている恵はより多くの人を豊かにする為にあるのだと、お話を聞き解釈致しました。大住様が仰っていた自問自答を繰り返し、自分がやるべき事、進むべき道をしっかりと捉え前に進んでいきます。ありがとうございました!
・なかなかセミナーに参加させて頂く機会が今までありませんでしたが、気軽に参加出来色々なお話しを聞けた事を大変ありがたく思っております。自分自身に自問自答し続けていきたいと思います。
※アンケートで頂いたコメントを一部抜粋して掲載しております。
***編集後記***
大住さんがお話になった、「難病の子どもとその家族へ夢を」の名付け親でもある故日野原重明先生とのエピソードが印象的でした。
「日野原先生がよく仰っていたのは、ペイバックとペイフォワードについてです。ペイバックは恩を受けた人に恩を返すので、『ありがとう』が広がっていかない。受けた恩を違う人に送るペイフォワード、『恩送り』が大切だ、といつも仰っていました。私はどんどん恩を送っていかないといけないなと思っています。」
自分が何かをした際に、恩返しをしてもらえるのも嬉しいことですが、第三者や見ず知らずの人へ「ありがとう」が広がっていくことは、一味違う嬉しさがあります。お話を伺い、自分が受け取った恩をどのように広げていくか、意識しながらて日々を過ごしてみようと思いました。
「難病の子どもとその家族へ夢を」紹介ページ
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