社会的養護の子どもたちの旅立ち

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社会的養護の子どもたちの旅立ち

社会的養護とは、「子どもの最善の利益のために」と「社会全体で子どもを育む」を理念として、保護者のない子どもや、保護者のもとにいさせることが適当でない子どもを、公的責任で養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことです。

今、全国で約4万1000人の子どもたちが、児童養護施設、里親、ファミリーホームなどの社会的養護のもとで暮らしています。

 

社会的養護の子どもたちの巣立ち

児童福祉法で、社会的養護の対象は18歳までとされています。このため、子どもたちは原則として18歳を迎えると、児童養護施設や里親家庭など、それまで暮らしていた場所から出て、自立することが求められます。

彼らが巣立つときには、親や実家などの経済的基盤を持たないため、家賃をはじめとする全ての生活費を自分で確保して生きていかなくてはなりません。

大学などに進学しようとする場合は、生活費に加えて学費も自分で工面する必要があります。

平成27年に東京都が行った社会的養護出身者への調査※では、進学した若者の5人に1人が、中途退学したと回答しています。その理由として最も多いのが「アルバイト等との両立」。学校を続ける上で、大変だと感じたこととして、児童養護施設出身の若者の94%が挙げたのも、「アルバイト等との両立」でした。

2017年に給付型奨学金制度が設立され、2020年度から導入された高等教育就学支援制度では、さらに支援が拡大されました。学費の面では、制度の充実が図られましたが、10代後半の若者が、衣食住を一人で工面しながら学校に通う困難がうかがえます。

※東京都福祉局 東京都における児童養護施設等退所者の実態調査報告書(平成29年2月)

 

巣立った子どもたちの抱える不安

18歳で自立する子どもたちが背負うのは、経済的な困難だけではありません。

社会的養護を離れるとは、これまで自分の生活の基盤であった「家」と、ともに過ごした家族のような担当職員や仲間の子どもたちと離れることです。

自分は捨てられてしまった・追い出されたと感じる子どもたちも少なくありません。

自分の存在の唯一の拠り所を失ったという、喪失感を抱く子どももいます。

頼れる親や実家が無いということは、セーフティーネットが無いというだけではなく、存在の拠り所が無いという不安をも子どもたちに与えているのです。

また、一人暮らしを始めると、これまでの施設の職員や子どもたちなど、たくさんの人に囲まれて過ごしていた生活とのギャップに、孤独感を深める子どももいます。同じ境遇の子どもたちから離れて暮らすことで、社会的養護の下で育ったという周囲との違いに、疎外感を抱くこともあります。

このような様々な感情を抱えながら、新しい環境の中で、新しい人間関係を築き、一人で生活を組み立てなければならないのです。

 

社会的養護の子どもたちに届けたいもの

児童養護施設等を退所してまず困ったこととして最も多くの回答を集めたのが「孤独感、孤立感」でした。そして、「金銭管理」、「生活費」と続いています。この上位3つの回答は、5年前に行われた調査でも上位3つを占めていました。

また、社会的養護出身の若者が「現在困っていること」として「大変困っている」または「少し困っている」と約半数が回答したのが「生活全般の不安や将来の不安について」でした。

 

令和4年の児童福祉法の改正により、自立への支援を年齢で一律に制限することをやめ、施設や自治体が自立可能と判断した時期まで継続できるようになります。自治体が、施設を出た後のサポートを強化し、相談を受ける拠点の整備にも取り組むことになりました。

今年も2000人を超える18歳の子どもたちが社会的養護からの巣立ちを迎えます。

社会的養護の子どもたちの自立には、様々な公的制度の充実が図られていますが、子どもたちが、支えられているという安心感を持ち、未来に希望を持てる社会を実現する責任は、私たちにあるのではないでしょうか。