共生社会を目指して…ウィッシュ・バケーションのもう一つの思い

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共生社会を目指して…ウィッシュ・バケーションのもう一つの思い

12月12日、公益社団法人難病の子どもとその家族へ夢をが企画したウィッシュ・バケーションの、浅草訪問の様子を取材しました。また、その翌月には、その時に協力先企業としてご家族をおもてなしした企業のスタッフの方向けの、ウィッシュ・バケーション報告会が開催されました。

ウィッシュ・バケーションの様子とその目的について、あわせてご紹介いたします。

 

ウィッシュ・バケーションって何?

ウィッシュ・バケーションは、支援者の方々からのご寄付をもとに難病の子どもとそのご家族を無償で旅行に招待する公益社団法人 難病の子どもと家族へ夢を が主催するプログラムです。旅行の手配や旅行中の身体的・精神的なサポートも、同団体のスタッフが行います。

ウィッシュ・バケーションへの参加は1家族につき1回きりですが、同団体は旅行後もご家族と連絡を取り合い、子どもの成長やご家族の様子を見守ります。

12月のウィッシュ・バケーションでは沖縄から2家族をご招待。1日目は移動日、2日目は東京ディズニーランドを訪問し、最終日の3日目は浅草を訪問しました。浅草では仲見世通りを歩いてお参りし、大人気の花月堂のメロンパンや大黒屋天麩羅の天丼を食べ、家族そろって似顔絵を描いてもらい、人力車に乗って観光をするプランが用意されています。

 

難病の子どもとご家族の生きづらさ

ウィッシュ・バケーションに参加する難病の子どもは、車いすを利用して至り、食事や排せつ、痰の吸引など日常生活の様々な場面でサポートが必要です。

そのため、一般の家庭であれば気軽にできる家族そろってのお出かけや旅行等が彼らにとっては大変困難なだけでなく、アンケート(※)によると、約半数の親が「いつまで続くか分からない日々に強い不安を感じる」「社会から孤立していると感じる」と回答しています。(※「医療的ケア児とその家族の生活実態報告書」2020年 3 月 株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング)。

また同団体代表理事の大住さんからは、難病の子どもを持つ親は子育てに関して意見が対立することが多く、同団体と関係のある親の約半数が、離婚もしくは離婚に近い状態にあるとのお話もありました。

 

浅草のウィッシュ・バケーション

全国の観光地で人力車事業を行っている「えびす屋」の浅草店は、10年近くウィッシュ・バケーションに協力してきました。浅草で働く車夫の皆さんは、事前にどんなご家族がいらっしゃるか、お子さんの好きなものは何か等をリサーチし、どうやって彼らを歓迎しようかと夜な夜なミーティングを重ねるそうです。

12月の午前9時頃。浅草のウィッシュ・バケーションでまずご家族を驚かせるのは、車で浅草に到着した時の、車夫の皆さんのお出迎えです。車夫の皆さんによる歓迎は、通りがかりの人も注目するくらい熱烈!

車で到着するご家族を、浅草寺の正門前でお出迎えするえびす屋の車夫の皆さん

 

雷門前で賑やかな記念撮影

 

ご家族が人力車に乗って浅草の街を巡る間も、車夫の方が物陰から現れてクイズを出したり、サプライズでプレゼントを渡したり等、ご家族を驚かせます。車夫の皆さんのおもてなしは、ご家族を笑顔にするだけでなく、感動させ涙を流されることも…。

「普段感じている不安感や社会からの孤立感が、彼らのおもてなしに接して『社会に受け入れられているんだ』という安心感や喜びに変わり、そうさせるのだと思います。」と大住さんは仰います。

 

人力車で観光中のご家族が通る予定の道で待ち伏せし、サプライズのプレゼントを準備する車夫の皆さん

 

人力車での観光後、立ち寄るのは「絵で一人でも多くの人を幸せにする」「絵で食べていける社会を創る」を夢に掲げる似顔絵専門店のカリカチュア・ジャパンの浅草店。こちらもウィッシュ・バケーションのコンセプトに共感し、10年近く同団体に協力しています。

似顔絵師さんは笑顔で会話を交わしながら、ご家族の雰囲気や特徴を絵に活かします。

 

モデルに似ているのはもちろんのこと、内面に潜む個性までもうまく引出しユーモアたっぷりに表現された似顔絵は、ご家族に大好評です。旅行後は自宅に飾り、似顔絵を見ながらウィッシュ・バケーションの思い出話に花を咲かせるご家族も多いとのこと。

 

出来上がった絵と似顔絵師さんと記念撮影♩

 

一般の人々が当たり前に経験する「日常」を、特別に経験することができるウィッシュ・バケーションは、ご家族にとってかけがえのない貴重な思い出になるそうです。

 

ウィッシュ・バケーションのもう一つの思い

ウィッシュ・バケーションには、ご家族が楽しむ時間を作ることの他にもう一つの思いがあります。それは、難病の子どもとそのご家族の生きざまを多くの方々に知ってもらう機会を設け、病気が特別なことではなく様々な個性の一つとして捉えられる、真の共生社会を作ることです。

先ほど述べたように、難病の子どもとご家族は日々様々な困難と直面しながら生活しています。

12月のウィッシュ・バケーションにご参加されたご家族は、子どもが生まれて1年半経った頃に子どもの難病が発覚。大変なショックを受けながらも、「できないことよりもできることに目を向けよう」と前向きに過ごすよう心がけたと言います。ですが、子どもを車いすに乗せて外出すると「なぜ周りに気を遣って『すみません、すみません』と謝らないといけない気分になるのだろうか。」と感じることもあるそうです。

大住さんは、一般の人々が難病児とご家族との接点を持つことによって意識が変容し、多様な人々を受け入れることができる社会に繋がるのではないかと考えています。

 

協力先企業の方向け報告会の様子

翌月1月12日夜、浅草名物の天丼屋である東京・浅草 大黒屋天麩羅さんの別館4Fで、昨年12月に浅草で実施したウィッシュ・バケーションの報告会が行われました。集まったのは、12月のウィッシュ・バケーションでご家族を人力車でおもてなしした「えびす屋」の車夫の方々と、ご家族の似顔絵を描いた「カリカチュア・ジャパン」の似顔絵師の方々です。

 

 

報告会では、大住さんより浅草のウィッシュ・バケーションに参加した2組のご家族についてお話がありました。コロナ禍のため、ウィッシュ・バケーションが3回もキャンセルとなり都度落胆、4回目でようやく参加できたご家族。10年近くご家庭内でトラブルを抱え、ようやく解決し晴れ晴れとした気持ちで参加されたご家族…。そんな彼らにとって、ウィッシュ・バケーションでのおもてなしがいかに感動的であったか、貴重な体験であったかを、大住さんはお話されました。

ご家族の思いを知り、肩を震わせる参加者も…

 

最後に、ご家族をおもてなししたえびす屋の車夫の皆さんやカリカチュア・ジャパンの似顔絵師の皆さんに大住さんから改めて感謝の気持ちをお伝えするとともに、自分の人生や思いを大切にして欲しい旨お話があり、報告会は終了しました。

大住さんのお話を聞き、カリカチュア・ジャパンの似顔絵師の方は、「病気は治すことはできないけど、仕事を通して相手に喜んでもらったり、楽しんでもらったりするためにできることがあるのだと改めて感じた」と涙ながらに仰いました。また、「今回の経験をして、困っている人がいたら声をかけられるようになったと思う」「彼らの生きざまを知ることで、特別な配慮が必要な人たちへのサービスを自分の組織で考え、できることを増やしたい」等の声もありました。

 

真の共生社会を目指して

2日目に訪れる東京ディズニーランドでも、同団体から研修を受けた提携先企業のボランティアがご家族と同行する仕組みになっており、一般の人々が難病の子どもとご家族について理解を深める場を設けています。

このように、ウィッシュ・バケーションはご家族がご自身の一生の思い出を作るだけでなく、一般の人々が共生社会について考えるきっかけとしての役割を担うことにも繋がっています。難病を抱えている、抱えていないという垣根を超え、共に歩んでいけば、多様な人々が受け入れられる共生社会を作ることができるのではないでしょうか。

 

2010年から始めたウィッシュ・バケーションは、開始から少しずつ協力先を増やし、今では全国13カ所で開催できるようになりました。

これからますます協力者が増え、たとえ難病を抱えていたとしても「社会ってあたたかいな」と感じる場が全国に増えていくことを願ってやみません。

 

※本事業は、休眠預金等活用法に基づく資金分配団体として実施する助成事業です。