日本の京劇界を担う次世代の育成を ー日本京劇振興協会ー

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日本の京劇界を担う次世代の育成を ー日本京劇振興協会ー

出演する京劇

一般財団法人日本京劇振興協会は、日本における「京劇」の普及と後進の育成を行っている団体です。

「京劇」は「中国版歌舞伎」ともいえる中国の伝統芸能。豪華な衣装と派手なメイク、芝居と唄、舞踊など賑やかな舞台で客席を湧かせます。

2022年12月末、世田谷区の北沢タウンホールを訪ねました。年明けに開催される「日本京劇芸術祭2023」に出演する一般市民の方々を対象としたワークショップが開かれています。

この京劇公演は日本で京劇を学ぶ日本人・在日中国人と、「世田谷こども京劇団」(日本京劇振興協会主宰)の団員が主演を務めます。スペシャルゲストとして日本を代表する京劇俳優・石山雄太さんと新潮劇院(日本京劇振興協会主宰)の草創期より活躍しているチャンチンホイさんが出演します。更に今回は一般の参加者も募集。本物の京劇衣装・メイクで京劇俳優さんたちと共演するのです。

今回の芸術祭に出演する市民は13人(子ども8人、大人5人)。親子で参加される方もいます。この日を含め2回のワークショップを経て京劇の舞台に立つのです。

京劇を観たことはあっても出演するのは初めて。練習前の表情には緊張感と期待感が浮かんでいます。

 

出演する演目は「孫悟空、桃を盗む」。孫悟空が三蔵法師と出会う前の暴れん坊だった頃をテーマにした伝統京劇が、市民参加型にアレンジされています。

6人と7人に分かれて、出演する場面の演技指導が始まりました。

子ども2人と大人4人は天兵(天国の兵隊)の役です。立つときの腕の位置や体重のかけ方、顔の向きなども細かくチェック。旗や棒などを扱いながら、舞台上のフォーメンションも覚えます。普段使わない筋肉を総動員して、一世一代の晴れ舞台に向けて真剣そのものです。

天兵たちの指導に当たっているのは京劇俳優で演出家の張春祥さん※1。日本京劇振興協会の代表理事です。

大きな身振りと声から「良い演技で舞台に立ってもらいたい!」「良い舞台をお客さんに観てもらいたい!」という熱い気持ちがひしひしと伝わってきます。

同じ場面を何度も練習しているうちに、皆さんの姿勢や表情が変わっていきます。

 

子ども6人と大人1人は孫悟空の手下の子ザルの役です。舞台袖から登場するシーンから始まり、棒術や立ち回り、おサルのポーズの練習などが続きます。

こちらの指導は、石山雄太さんと日本京劇振興協会の常務理事であり京劇俳優と企画制作もこなす張烏梅(梅木俊治)さんが担当。

石山さんと張烏梅さんの動きを真似る子どもたち。優しい指導のおかげで、徐々に恥ずかしさが薄れ、子どもたちは子ザルになりきっていきます。

練習が終わる頃には、気分はすっかり京劇俳優。本番当日に本物の衣装を着てメイクをしたら、さらに気持ちが盛り上がることでしょう。

※1 「日本京劇芸術祭2023」演出・総監修:張春祥インタビュー

 

「日本京劇芸術祭」開幕!

年が明けて1月7日(土)。いよいよ「日本京劇芸術祭2023」が始まります。京劇ファンと思しき方、地元世田谷区の方など、300席ほどのホールはほぼ満席です。市民出演者のご家族も今か今かと開幕を待っている様子。カメラを握る手に力が入っています。

幕が上がると張烏梅さんが登場し、軽妙な口調で初心者にもわかりやすく京劇や演目のレクチャーをしてくれます。時折語られる自虐ネタが楽しい。客席が笑いに包まれます。

この日の演目は7本。1本目の「二将軍〜三国志演戯より〜」に野口友椰君と李伯強君が登場しました!

2021年3月の施設訪問※2の折に会っていた二人。「世田谷こども京劇団」の団員です。

1年9か月ぶりに見る彼らは、身長が伸びて、メイク越しでもわかるくらい凛々しい顔になっています。

その成長ぶりに感激し、演技や中国語が上達していることに感激し、なにより二人とも京劇を続けていることに感激します。

豪華な鎧をまとい派手な立ち回りを見せてくれる二人。このまま京劇を好きでいてくれたら、将来は偉大な京劇俳優になるかも…などと妄想します。

※2 日本京劇振興協会の福祉活動(施設訪問)の様子

その後、プログラムは5本の舞踏と唄(うた)に進みます。優雅で綺麗そして可愛い演目が続きました※3が、特筆したいのは郭江さんの「覇王別姫」です。

郭江さんは中国の方です。ご実家が京劇団の隣にあったにもかかわらず、京劇にはまったく関心が無かった郭江さん。開眼したのは日本に来てからなのだとか。

中国でもほとんどいなくなった貴重な男旦(男性俳優が演じる女性役)として、華麗に「覇王別姫」を舞い唄います。立ち姿が美しく、所作が上品です。舞台映えのする大柄な体はしなやかで、女性俳優が演じるときとはまた違った色気があります。

もともと「覇王別姫」は、かつての名優 梅蘭芳のために書き下ろされた物語。男旦ならではの美しさを余すことなく伝える演目なのだと再認識しました。

※3 「日本京劇芸術祭2023」出演者/演目情報

 

いざ、本番!

休憩を挟んでいよいよ「孫悟空、桃を盗む」の時間です。

赤い衣装の天兵たちが大きな拍手と共に舞台中央に進みます。色鮮やかな旗を翻しながら孫悟空を囲みそして舞台袖へ。練習通りです!

孫悟空を演じるのは石山雄太さん。石山さんは中国戯曲学院で京劇を学び、中国京劇界初の外国人京劇俳優として、中国と日本、両国で活躍しています。

孫悟空が舞台で暴れています。舞台は遠いしメイクも濃い。なのに表情の変化が手に取るようにわかります。桃や金丹(きんたん)を盗み食いするときのしぐさや顔つきが本当に見事で目が離せません。

黄色い衣装を着た子ザルが現れました!

先頭の張烏梅さんの後をついて行く7人の子ザル。腰を落として手を前に。お約束のおサルのポーズもきちんとできています。

ああ、この衣装はなんて子どもたちを愛らしく見せるのでしょう。会場のあちこちから「可愛い〜!」という声が聞こえてきます。

舞台は闘いの場面に変わります。天兵たちも棒を構えて孫悟空に向かっていき、ステージの後方へ。前方では青龍・白虎を相手に孫悟空が立ち回りを見せています。天兵たちの衣装の美しい赤色が闘いの雰囲気を盛り上げます。

ここで張春祥さんが登場です。スターだけが持つオーラ、さすがの貫禄です。登場時間は短いのに客席に強烈な印象を残します。

祖父の代より三代続く京劇一家に生まれ、自身も北京京劇院に13年間所属した張春祥さんは1989年に来日。以来、芸術活動を続け、在日京劇団としての存在意義の確立に力を注いできました。

京劇団の運営や京劇公演、全国で展開するワークショップ、福祉施設への慰問など、数々の活動が京劇の普及と京劇俳優の育成につながっています。日本の京劇は張春祥さん無しには語れないのです。

さて、「孫悟空、桃を盗む」もいよいよ終盤へ。子ザルたちも再び登場し、闘う孫悟空を助けます。

天国の神様だけが食べられる桃。それを盗み食いした孫悟空が神様に勝利するというこのお話。面白くて楽しくて痛快です。

公演を最後まで見届けたお客様たちからは盛大な拍手が送られます。カーテンコールの間も拍手とフラッシュが止むことはありませんでした。

京劇の舞台に立つという貴重な体験をした13人の市民のみなさん。それぞれのお顔は満足感と達成感に満ち満ちているように見えました。

小寒を過ぎたばかりのこの日、ホールの外は厳しい寒さでしたが、熱量いっぱいの京劇のおかげで温かい気持ちで帰ることができました。

この公演をきっかけに「世田谷こども京劇団」に入団する子どもが現れて、第二、第三の石山雄太さんを目指してくれたら…と、野口君や李君の時と同じように勝手に妄想するのでした。

 

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