【セミナー報告】「京劇の様式美~中国伝統劇への誘い〜」

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【セミナー報告】「京劇の様式美~中国伝統劇への誘い〜」

 

京劇っておもしろい!

11月29日(月)19時より「京劇の様式美~中国伝統劇への誘い〜」と題したセミナーを開催しました。

ご登壇くださったのは、一般財団法人日本京劇振興協会(以下、京劇振興協会といいます)の代表理事 張春祥さんと常務理事 張烏梅さんです。

 

張春祥(ちょうしゅんしょう)さんは祖父の代から京劇を家業とする京劇一家の三代目。

1989年来日以降は、中島みゆき「夜会」、蜷川幸雄演出・東山紀之主演「さらばわが愛・覇王別姫」などをはじめとした舞台や振り付け、立ち回り指導などで活躍する京劇の第一人者です。

 

張烏梅(ちゃんうーめー)さんは日本人の京劇俳優で、京劇振興協会設立時から張春祥さんに師事。

「文丑(ぶんちゅう:会話専門の道化役)」として舞台出演をする傍らプロデュース、演出など、団体運営全般を統括されています。

深い知識を道化役らしい軽妙な語り口でわかりやすく解説してくださいます。

日本人京劇俳優 張烏梅さん

まずは京劇の歴史と様式のレクチャーです。

京劇とは中国の伝統的な古典演劇の一つ。 清代に発祥し北京を中心に発展したので「京」の名がついたそうです。

京劇の第一人者 張春祥さん

京劇の役柄は大きく分けて「生」「旦」「浄」「丑」の4つ。

「生」は男性、「旦」は女性です。「浄」は敵役や特異な性格をもつ豪傑的な人物、「丑」は道化役や時に小悪人的な人物を示すこともあるそうで、それぞれの化粧の特徴が説明されました。

化粧(くまどり)の色は性格を表しているそうです。例えば、

・赤:忠義者。気が短い

・青:凶悪。

・黒:剛直で一本気

・白:ずるがしこい悪党

・金/銀:神や仙人の境地に近付いた人物

など、一目で役柄の性格までわかるようになっています。(変化や例外もあります)

 

烏梅さんの説明は、親しみやすくユーモアにあふれています。初心者にもわかりやすくて助かります。

烏梅さん曰く、「私が喋る係、師匠が動く係」だそうで、ここから春祥さんが大活躍!

4つの役柄の所作を実演してくださいます。

同じ人なのに、所作を変えるだけで違う人物に見えます。

その動きは軽やかで、春祥さんだけ重力のない場所にいるよう。そして、その流れるような美しさ。

切れのある動きから(歌舞伎でいうところの)見得をピタッと決めると、大きな拍手が。

うーん、京劇っておもしろいかも。

 

動きの基礎「雲手(ユンショウ)」を習います

会場全員で雲手

京劇の基本中の基本「雲手(ユンショウ)」を習います。

これ、実際にやってみると難しいのです。

春祥さんの腕はしなやかに自由自在に動き、指先やこぶしは柔らかく優しく宙を泳ぎます。

同じように動かしているつもりでも、こちらは全然思うような形になってくれません。

でも、全員で腕を伸ばしたり縮めたりしていると、だんだんと妙な一体感が生まれ、不思議と楽しくなってくるのでした。

お金をまわそう基金のスタッフも雲手

代表理事の澤上も雲手

 

 

様式美を楽しむ

剣の立ち回りを披露

春祥さんと烏梅さんで剣や槍などの小道具を使った実演をします。

春祥さんのかけ声に動きを合わせる烏梅さん。その息の合った動きに「さすが師弟」という声も上がり、会場はますます盛り上がります。

鞭一本で馬の乗り降りや、馬に乗って疾走している様子なども実演されます。馬の形が見え、蹄の音が聞こえるようです。

烏梅さんをモデルに衣装の説明です

今回は豪華な衣装もたくさん持って来てくださいました。

衣装の色は主に人物の身分を伝える役割を果たします。

京劇の服装というと鮮やかな色づかいが特徴的ですが、主役は「上五色」といって、黄・赤・白・黒・緑の原色を身につけます。

とくに、黄色は高貴な色なので、皇帝や身分の高い人が身につけることが多いそうです。裏地に龍・鳳凰・雲・波などの刺繍が施されているのも特徴的です。

 

春祥さんは言います。

「京劇はストーリーそのものはそんなに面白くないです。オーバーなアクションや表情、歌などの様式美を楽しんでもらう伝統芸能なのです。」

「特にストーリーを知らないと、何をやっているのかわからなくて、全然面白くないです。やはり観劇する前にあらすじや登場人物、時代背景などは調べておいた方が、楽しんでいただけると思いますよ。」

能やオペラと同じ。やはり下調べは大切ですし、観劇する際のエチケットかもしれません。

 

張春祥さんの実演!

春祥さんがおもむろに衣装を身に着け始めました。

白地に青の刺繍も美しく、その背中には剣を背負います。

有名な「三岔口(さんちゃこう)」の一場面、主役の勇士 任堂恵が焦賛を救うため、三岔山の宿に向かうところを演じてくださるのでした!

片方の肩から衣装を外しているのは、とても急いでいる様子を表しているそうです。

化粧こそしていませんが(化粧には2時間半かかるんです)、大きく変わる表情から任堂恵の切羽詰まった気持ちが伝わってきます。

さすが、京劇のスター。一瞬にして会場のすべての視線が春祥さんに吸い寄せられます。

烏梅さんが「前々から私の師匠はかっこいいと思っていましたが、やっぱりかっこいいですね。」と一言。

はい。そして、やっぱり京劇っておもしろいです。

 

衣装の着付け体験も!

 

興奮さめやらぬうちに、セミナーはお開きに。

希望者に衣装の着付け体験が行われました。

みな、お目当ての衣装を身に着けて撮影会が始まります。

春祥さんは衣装の説明を求められたり、ツーショットをお願いされたりと大忙し。

「春祥さんて、スターなのにすごく気さくで優しいですよねー。」と、参加者の一人がスタッフに耳打ちしてくださいました。

「京劇の様式美~中国伝統劇への誘い〜」は、おかげさまで大盛況のうちに終えることができました!

ご来場のみなさまのご感想を紹介します。【アンケートより一部抜粋】

◇張春祥さんと張烏梅さんの息がピッタリで、解説と実演セットでとてもイイ学びになりました。
◇全く知識がなかった京劇ですが、非常に興味を持ちました。判り易い御説明・御解説ありがとうございました。
◇京劇は中国でないと観に行けないと思っていましたが、皆さんのおかげでものすごく身近になりました。
◇軽い気持ちで参加しましたが、内容がすごく良かったです。京劇の型とか、もう一度見てみたい。
◇日本でもこのように活動されている劇団があることを知らなかったので、まず公演を観に行きたいと思います。日本人の方が弟子入りして頑張っていらっしゃるのは、とても応援したいです。
◇ここ何年かワークショップに参加できなかったので、とても楽しく拝見しました。春祥さん、いつもかっこいいです。

喜んでいただけた様子が伝わってきて、当財団のスタッフ一同感謝の気持ちでいっぱいです。

ご来場のみなさま、遅くまでお付き合いいただきありがとうございました!
そして、日本京劇振興協会の張春祥さん、張烏梅さん、楽しいひとときを本当にありがとうございました!

 

日本京劇振興協会の福祉活動にご支援をお願いします。

京劇振興協会では地域における養護施設や特別支援学級、老人ホーム等への慰問・京劇実演を続けています。

「少人数でも上演可能」「大道具などの設営が不要」「ノンバーバル(言葉を用いない)な演劇」という京劇の特異性が、広い会場を持たない施設において、障害の有無や年代などに関係なく楽しんでいただくためにはとても有効です。

施設ではコロナ禍の影響で外国文化や芸術に触れる機会が減少しています。

京劇振興協会の福祉支援活動に皆さまのご賛同とご支援をよろしくお願いいたします。

中国伝統芸能「京劇」の日本での振興活動と福祉支援