「いのちの教室」で学べるもの

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「いのちの教室」で学べるもの

2020年11月、宮崎市の市立江南小学校で、心肺停止に陥った児童のいのちを、先生やクラスメートによる連係で繋ぎ止めた、というニュースがありました。児童は心臓に疾患があったそうです。

冷静な判断と行動は「知識と訓練」によってもたらされます。江南小学校の先生たちも心臓に疾患のある児童に「もしも」のことがあった場合を想定して、毎年訓練を実施していたそうです。

AEDが抱える課題

AEDは心停止の際に機器が自動的に心電図の解析を行い、心室細動を検出した際は除細動を行う医療機器です。動作が自動化されているため非医療従事者でも使用することが出来ます。

※心臓の血液を全身に送り出す場所(心室)が細かく震えて、血液を送り出せなくなった状態

日本では、救急車が現場到着するまで平均で約8分を要すると言われています。心室細動が起きると数秒で意識がなくなり約5分後には脳障害が発生して死亡する危険があるため、一刻も早く電気的除細動を行うことが必要です。

救命でAEDを使用した場合、約50%の方が社会復帰できることがわかっています。とっさにAEDを取りに行ける人、使える人が近くにいれば救命率は上がるのです。

ところが、現在、日本のAEDの普及率は世界一と言われているにもかかわらず、その使用率は5.1%と大変低く、「有効活用されていない」という社会課題を抱えています。

※総務省消防庁:令和2年版救急・救助の現況

この課題を解決するため、一般社団法人ATHLETE SAVE JAPAN(以下、ASJといいます。)では、心臓マッサージの方法とAEDの使い方の2点に絞った簡易的なAED講習「いのちの教室」を実施しています。

いざという場面でAEDを正しく使える人を増やすことで、救命率の向上を目指しています。

 

小学校で「いのちの教室」

とある午後、「いのちの教室」を見学するため世田谷区内の小学校を訪れました。

この日の受講者は6年生。110名ほどの児童が換気が万全な体育館に集合します。子どもたちはみな手足が長い。そして顔が小さい。大人のような体格の子もいますが、好奇心いっぱいの表情はあどけなくて素直そのものです。

この日の講師は、2012年ロンドン五輪日本代表候補にもなった元体操女子日本代表の飯塚友海さんです。現在は栄養士として活躍するかたわら、「ASJアスリート」として社会貢献活動を続けています。

飯塚さんは優しい口調で子どもたちに尋ねます。「AEDがどこにあるかわかりますか?」子どもたちはみな一斉に体育館入口に設置されたAEDの方向を指さします。

救命は時間との勝負です。家にいるとき、職場にいるとき、道を歩いているとき、誰かが倒れたら、一番近くのAEDを取りに行かなくてはならないため、AEDが設置されている場所を把握していることはとても重要です。

この小学校では、しっかりと危機管理の教育がされていることがわかり、とても感心しました。

「いのちの教室」は簡易的なAEDの装置を使って、心臓マッサージとAEDの使用方法を学びます。

講習はASJが作成したオリジナルの映像を見ながら進行します。この映像により講師が変わっても講習の質が担保されるのです。

映像では倒れた人のためにAEDを取りに走った小学生の体験談なども流れます。子どもたちは真剣に映像を見つめ、飯塚さんの解説に耳を傾けます。

好奇心旺盛で気持ちが柔らかいこの時期に「自分たちも誰かを助けることができる」という気づきは大切です。

自分たちが社会の一員として存在していることを、子どもたちは「いのちの教室」を通じて知ることができます。それは、自身の自己肯定感にもつながる非常に貴重な出会いだと言えます。

講師はアスリート

ASJではアスリートを講師に起用することにより、アスリートのセカンドキャリア支援も積極的に行っています。

アスリートが社会貢献活動をすることは、欧米では当たり前であり、日本でも徐々にその考え方が普及してきています。「いのちの教室」はアスリートに、社会貢献活動をする場を提供する活動でもあります。

また、アスリート自身にとっても、講師となることでスポーツの普及や引退後のセカンドキャリア支援にも繋がり、活動の場を広げることができます。

5.1%という使用率が示すように、日本では多くの方がAEDに関して「無関心層」です。発信力のあるアスリートが登壇することは、この無関心層にアプローチする手段でもあるのです。

特に子どもたちにとってアスリートの話は強く心に響きます。飯塚さんもご自身の選手時代のお話や、美しい実技を披露してくれました。子どもたちも飯塚さんのお話を聞き、一緒に体を動かすことで、AEDや心臓マッサージの知識がより強く印象に残ったようでした。

「いのちの教室」で共助の精神を学んだ子どもたちが健やかに成長し、安心・安全な社会づくりを担う人材になってくれる、そんな未来を想像しながら小学校を後にしたのでした。

 

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