ピアサポート ~障害のある子とその家族が地域で普通に生きていくために~

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ピアサポート ~障害のある子とその家族が地域で普通に生きていくために~

『普通に死ぬ~いのちの自立~』上映会

9月。当財団の小久保と瀬沼は、「特定非営利法人みかんぐみ」が主催する上映会に参加するため、「セシオン杉並」に向かいました。

暑さが残る中、会場前にはすでに30名以上の方が並んでいて、この映画への関心の高さが伺えます。

ボランティアのみなさんの打ち合わせ

 

会場では、みかんぐみのボランティアさん14名と立正短期大学の先生と学生さん13名が、てきぱきと準備を進めていました。

会場の消毒、設営、受付、座席の案内など、多くの方たちのご協力により映画は静かに始まります。

『普通に死ぬ~いのちの自立~』パンフレット

静岡県富士市・富士宮市に住む親たちの取り組みと自立への試みを5年にわたり記録した前作『普通に生きる~自立をめざして~』(2011年)から約10年。

『普通に死ぬ~いのちの自立~』は、その続編として、重い障害のある人が「親亡き後」も、慣れ親しんだ地域でどうすれば「普通に生き、普通に死ぬ」ことができるのかを問いかけたドキュメンタリーです。

カメラは亡くなっていく人の姿、そして残された人と、残された人を支える人たちの姿を丹念に追います。

重い障害のある人ひとりひとりをヘルパーや医師、看護師ら専門職が連携し、家族とともに支える姿も映し出しながら、彼らをめぐる制度の限界や課題を浮き彫りにします。

困難を乗り越え、障害のある人とその家族が「普通に生き、普通に死ぬ」ことができる地域づくりに奔走する人たち。映画は最後に希望の欠片をみせてくれます。

「以前は(重い障害のある)この子より一日でも長く生きなければと思っていた。でも今は自分が死んだ後もこの子には一日でも長く生きてほしいと思うようになった。」というひとりの父親の言葉が、親子の望む「普通に生き、普通に死ぬ」ことにつながる象徴のようで印象的でした。

監督の貞末麻哉子さんは、上映会後のフリートークでこう語りました。

「『普通に死ぬ』というタイトルで傷つく人がいるかもしれないという怖さはありました。でも、「死」を正面から描いてこそ「生」の意味と向き合えるのではないか。そんな思いから、この映画の使命に正直に、タイトルを『普通に死ぬ』に決めました。」

 

※「普通に死ぬ~いのちの自立~」は自主上映会のために上映用メディアの貸し出しをしています。 
詳細は、http://www.motherbird.net/~ikiru2/top.html でご確認ください。

 

「地域で生きる」ためのピアサポート事業

「医療的ケア児」は自宅等で日常生活を送る上で医療的なケアと医療機器を必要とする子どものことです。医療的ケア児は、歩行可能な状態から自らの意思で身体を動かすことが困難な状態までさまざまですが、その数は約20,000人といわれています。

医療的ケア児の多くは、出生後、手術や経過観察を経てNICU(新生児集中治療室)から退院し地域に戻ってきます。障害のある子どもは一般の子育て支援策の利用が困難であり、家族は退院後の地域生活に大きな不安を抱いています。

また、日常的に高度な在宅医療や生活支援が必要でありながら、他児やその家族との交流を持つ機会に恵まれず、地域や社会からの孤立感を深めている例も少なくありません。

みかんぐみでは、保護者の過重負担を軽減し、安心して地域生活を送ることができるよう、行政による保健師の育児相談などと協働し、より実効的な支援として、先輩保護者(ピア)による相談・助言を実施しています。

 

左から、小原さん、荻野さん、村さん

ピアサポートですべての人が生きやすい社会を築きたい

会場の撤収作業が終わった後、みかんぐみの代表理事 村 一浩さん、理事で重い障害があるお子さんの母でもある荻野志保さん、そして同じく重い障害があるお子さんを持ち、みかんぐみに在籍している小原さんの3名にお時間をいただき、瀬沼がお話を伺いました。

 

瀬沼
瀬沼
まず、「みかんぐみ」という可愛い名前の由来を教えてください。

 

荻野さん
荻野さん

2014年に障害のある子どもを持った親たちで任意団体「すぎなみ重度心身障害児親子の会 みかんぐみ」を立ち上げました。

子どもたちが通っていた「杉並区こども発達センター(※)」の1~2歳児のグループ名が「みかんぐみ」だったので、そこから名付けました。

2018年5月に特定非営利として認証され、名称を「特定非営利法人みかんぐみ」としました。

 

※発達に心配のある子どもに対して、遊びや活動を通して発達を促す支援を行ったり、専門職員が相談に応じたりする主に自治体の施設

瀬沼
瀬沼
小原さんはみかんぐみのピアサポートを受けられてどのように感じていらっしゃいますか?。

 

小原さん
小原さん

自分が体験するいろいろな出来事をすでに経験している先輩がいることがとても心強いです。

子どもが重い障害を持っていると、健常のお子さんやそのお母さんはもちろん、ほかの障害のあるお子さんとも交流できる機会はとても少ないので、みかんぐみのつながりは有難いですね。保健師さんとも連携しているので安心感もあります。

何よりもみなさんとても明るいんですよ。だからお話しするのが楽しいです。

ピアサポートのおかげで、ずいぶんと助けられてきたように思います。

 

瀬沼
瀬沼
ピアサポートをする側の荻野さんはいかがですか?

 

荻野さん
荻野さん

自分の性格なのか、障害のある子を育てていく上での辛かったこと悲しかったこと悔しかったことなど、いつのまにか忘れちゃうんです。

「あのときは大変だった」なんて、おそらく日々に忙殺されて上書きされてしまうのかも。

でも、ピアサポートで相談を受けると、「ああ、そんなことがあったな」とか「同じような気持ちになったな」とか記憶がよみがえってくるんです。

それと同時に、嬉しかったことや頑張ったことも思い出したりして、障害のある子の子育てを通して、自分の人生がどれだけ豊かに彩られてきたか再確認できる場にもなっています。

地域で障害のある子を抱えて孤独を感じている人に、私の経験が役に立つのならこんなに嬉しいことはありません。

 

瀬沼
瀬沼
小原さんもいずれは相談を受ける側になるんでしょうか?

 

小原さん
小原さん

私はまだ相談にのっていただくばかりですが、そうですね、いずれはピアサポートのみなさんのように、障害のあるお子さんがいるご家族の力になれたらと思っています。

それも私の子育ての励みになっているかもしれませんね。

 

「24時間子どものことばかり考え続けているわけではないですよ!子どもと離れているときは、自分の時間も大切にしています!」と荻野さんと小原さんは笑います。
朗らかで前向きでパワフルで、こちらまで元気をもらえます。

瀬沼
瀬沼
「地域で生きる」というのは医療的ケア児やそのご家族にとってやはり難しいことですか。

 

村さん
村さん

医療的ケア児(者)や重症心身障害児(者)の支援制度は非常に限られています。

特別支援学校を卒業後は生活介護施設等に通い、いずれは親元を離れてグループホームなどに入居し自立するなど、少ない選択肢の中から子どもにとって最善の道を探さなければなりません。

『普通に死ぬ』の中でもいくつかの事例がありましたが、すでにある枠組みの中だけでは『普通の生と死』が得られないと感じる親御さんもかなりいるのではないかと思います。

 

瀬沼
瀬沼
重い障害のあるお子さんやそのご家族が「地域で生きる」ために、今後みかんぐみのピアサポートはどのように展開していく予定ですか?

 

荻野さん
荻野さん

みかんぐみで構築したピアサポートの仕組みを、他の地域にも広げていって、地域生活の見通しが持てるような知識やノウハウを提供していきたいです。

ピアサポートはみかんぐみの活動の基本です。これからも子どもたち同様、大切に育てていきたいです。

 

村さん
村さん

ピアサポートで培った多くの知見を、行政と当事者団体が協働する支援体制のモデルケースとして、他の自治体でも発信していくことができたらと考えています。

障害者が安心して住める場所は、ほかの人にとっても住みやすい場所だと思います。

すべての人が生きやすい社会を築き、豊かにしていくことが私たちの願いです。

 

障害を持つ人とそのご家族が『普通に生き、普通に死ぬ』ことの難しさを改めて知ったこの日。

これから大人になっていく障害のある子たちのために、みかんぐみのピアサポートが、地域で『普通に生きぬく』ことの根っことなるよう祈りながら、会場を後にしました。

特定非営利活動法人みかんぐみのHPは↓こちらから!
https://mikangumi.com/

みかんぐみのFacebook・Twitterは↓こちらから!
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~ご支援のお願い~

お金をまわそう基金では、特定非営利法人みかんぐみへの寄付を受け付けています。

これまで交流会や助言などは、当事者保護者(ピアサポートスタッフ)がボランティアで行ってきましたが、今後は、皆さまからのご寄付を人件費に充てることにより、この事業を保護者が在宅で担える「仕事」として位置づけることができます。

これにより、ピアサポート事業が有効な支援策として評価されるとともに、今までボランティアベースで活動してきた保護者にとって、収入の道が拓かれることになります。

みなさまのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

 

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