ここに子どもたちの居場所がある、NPO法人クリエイト訪問

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ここに子どもたちの居場所がある、NPO法人クリエイト訪問

香川県の高松駅からJR高徳線で東へ1時間ほど。穏やかな瀬戸内海となだらかな稜線の山々に囲まれたさぬき市の鶴羽(つるわ)駅近くに「NPO法人クリエイト」はあります。

2月中旬、クリエイトが運営する「クリエイトインターナショナルクリスチャンスクール」(以下、クリエイト)を訪ねました。

 

クリエイトは2006年に設立された教会併設の全日制・小中一貫のフリースクールです。授業時間やカリキュラム、給食等は普通の学校と変わりはありません。

学習カリキュラムは個々の習熟度に合わせて組まれています。また、老人ホームを訪問したり、タイやフィリピンなど海外のボランティアに参加したり、海外から来日して一時的に通ってくる子どもたちと過ごしたりと、勉強以外の体験を重ねることで、社会貢献の心と国際的な視野を育んでいます。

にこやかに出迎えてくださったのは多田洋美さん。クリエイトの理事であり、フリースクールの代表兼先生です。クリエイトでは地域の子どもたちを対象とした英語スクールも併設しており、多田さんはここでも教えています。

多田さんは佐賀県のご出身。製薬会社に勤務していましたが、大学時代に知り合った現在のご主人と遠距離恋愛を経て結婚し、高松市にやって来ました。

ご主人の影響で通い始めた教会で、クリエイトの活動に出会い、2008年からスタッフとして携わるようになりました。2019年には教員免許試験に見事合格!このニュースには当財団のスタッフ達も大喜びでした。

多田さんは言います。「ここに居場所がある」と。

学校では居場所が見つからない子どももクリエイトに来れば居場所がある。ここに足を踏み入れることは恥ずかしいことや失敗ではない。ここで学び、ここから巣立つことは、子ども達の将来と地域の未来につながる美しいチャレンジであり、むしろ誇りなのだと。

お話を伺っていると、長年の活動を通じて地元に根を張ってきた多田さんの、地域の子どもたちに対する愛情と教育理念が強く胸に迫ってきます。

助けを待っている子どもやその家族に多田さんの思いが届くことを願わずにはいられません。

フリースクールを取り巻く課題

文部科学省の統計(※)によると、平成30年度の不登校は、小学生44,841人(全体の0.7%)、中学生119,687人(全体の3.6%)となっています。

小学生の前年度比の増加率は28%と非常に高く、不登校の子どもは今後さらに増加していくものと考えられます。

不登校の原因で最も多いのは、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」です。「いじめ」が原因の不登校は小学生で0.8%、中学生で0.6%です。また、年齢が低くなると家庭生活に起因する不登校の割合が大きくなっています。

※文科省統計「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(平成30年度)

 

不登校に対する理解はここ数年だいぶ進んでいます。

「教育の多様化・自由化」が推進され、一定の条件をクリアすれば、家庭学習やフリークールでの学習活動が義務教育課程での学びとして認められるようになろうとしています。

しかし、実際にはフリースクールへ通う家庭に対しては原則、公費による補助がないままです。

フリースクールに通うことで精神的な安定を得る不登校の子どもや保護者は多くいます。また、希望する進学や進路に道を開くことができるという点でも、フリースクールの存在価値は認められつつあります。

公費補助に関する結論は先送りが続いており、踏み込んだ議論はまだされていません。フリースクールに対して補助がないことで、公費格差が生じており、それは、不登校の家庭やフリースクールで働く職員への負担を強いているという問題を生んでいます。

現在クリエイトに通う子どもは3人。このうちの1人はこの春卒業して高松市内の高校に進学します。4月からは3人が入学・編入し、児童数は5人となります。以前は15人ほどいた児童生徒が減少の一途をたどり、授業料が主な収入源であるクリエイトにとっては厳しい運営状況が続いています。

多田さんと話をしている最中に、「すみません、これからパートに行かなくてはいけないので…。」と帰られた加茂先生。クリエイトの職員がクリエイトの事業だけで生計が立てられるよう、一日も早く公費補助の議論が進み、期待通りの結論が出ることを祈るばかりです。

 

 

充実した学習体制

教室に移動して授業の様子を見学しました。

驚いたのは子どもたちの集中力です。私語やよそ見など一切なく、自分の課題に取り組んでいます。わからないところは、先生にヒントをもらいながら、最後まで自分の力で問題を解きます。先生も子どもたちも笑顔で、楽しんで学習している様子が伝わってきます。

実際、子どもたちの学習進度は早く、成績も優秀なのだそうです。中学3年の生徒はすでに英語検定2級を取得していて、一人でフィンランドに行ったときも不便は感じなかったとのこと。英語力のみならず、地元の人と臆することなくコミュニケーションがとれる国際感覚と度胸もクリエイトで養われたものです。

給食は卒業生のお母様たちが交代で作りに来ています。この日のメニューは、野菜いっぱいのポトフ、白身魚のから揚げ、わかめご飯、いよかん。白身魚は地元の魚屋さんが、病院食で使うのと同じ、骨をすべて取り除いた切り身をご好意で持ってきてくださるそうです。

元は牡蠣小屋だったという建物で薪ストーブを囲んで食べる給食。すべて地元の食材を使った美味しくて優しい味です。みな、思い思いの会話とともに、ゆっくりと食事を楽しみます。

給食を作ってくださったお二人に「お子さんをクリエイトに入れて良かったですか?」とお聞きしました。大きく大きく頷かれ、笑顔で「良かったです!」と答えてくださいました。

子どもたちのために

訪問した日はたまたま理事会の開催日でした。理事長の多田美鈴さん(この辺りは多田姓が多いのだそうです。)は「運営が本当に苦しい時期はフリースクールを閉めようと思ったこともありました。

でも、苦しんでいる子がいれば受け入れてあげたい。先生たちが同じ理念を持ち、少ないお給料でも頑張ってくれているから、これまで続けてくることができました。助成金を受けなくても運営していける体制づくりが課題です」と言います。

2019年にお金をまわそう基金の助成先に採択され、寄付が集まったときは「自分たちの活動を見守ってくれている人がいる」ということに励まされたそうです。それを糧に「今後も苦しみを抱える子どもや家族のために力を尽くしていきたい」と話してくださいました。

すべては子どもたちのために。クリエイトの活動の信念と温かさ、そして課題。さまざまな学びを得た一日でした。

 

ご支援のお願い

お金をまわそう基金では、NPO法人クリエイトへの寄付を受け付けています。頂いた寄付は、助けを求めている子どもの居場所づくりや学習支援を行うクリエイトのフリースクール運営事業に充てられます。

皆様からのご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。

 

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