日本の伝統文化『能』を次世代に伝える 山本能楽堂

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日本の伝統文化『能』を次世代に伝える 山本能楽堂

3月9日、大阪の山本能楽堂にて行われた公演「文化の伝承 花と芸能」を観させていただきました。

公益財団法人山本能楽堂は、大阪市営地下鉄谷町線・中央線の「谷町四丁目」駅から徒歩で約5分。大通りから一本中に入ったところにあります。1927年に創設され、戦災で焼失しましたが1950年に再建されました。黒の縦格子が印象的なモダンな外観の建物ですが、2006年には、国登録有形文化財に指定されており、一歩中に足を踏み入れると階段や柱など歴史を感じる箇所がそこかしこに見受けられます。

受け付けのある玄関から廊下を抜けて客席に入ると、檜皮葺の大きな屋根を乗せた能舞台が目に飛び込んできます。能楽堂なので能舞台があって当然なのですが、ありふれた通りにある一軒の建物に入った先に突然こんな光景があるというのは、初めて能に触れる身としては何とも不思議な感覚になります。

客席は1階席と2階席に分かれていますが、どちらも開演前には観客でほぼ満席となりました。年配の方が多い印象ですが、20代30代の方も見受けられます。

今回の公演「文化の伝承 花と芸能」は、花一杯に装飾された山本能楽堂の建物内で、半能とチェロの演奏を楽しむ趣向で、公演後には有形文化財の建物の中を見学することもできます。

 

日本人の美意識が凝縮された能

山本能楽堂 能舞台

最初のプログラムは半能「熊野(ゆや)」。春を代表する能である「熊野」を、後半の見どころのみ取り上げる半能というスタイルで上演されました。

初めに紋付袴姿の囃子方の3人が笛、小鼓、大鼓を携えて舞台左手奥の橋掛かりから入場し、舞台の奥に座ります。続いて部隊右手奥の切戸口と呼ばれる小さな戸から、3人の地謡が入場し舞台に向かって右手に座ります。

そして、囃子方、地謡がそろうと舞台の主役である熊野(シテ)が橋掛かりから登場してきます。シテ方は能面をかけ、桜の花模様のきれいな衣装を身につけ、ゆっくりゆっくりと進み、舞台中央で扇を開いて舞い始めました。

シテの上下の動きが少ない進み方、ターンテーブルに乗っているような方向転換、時折大きな音で足を踏み鳴らす仕草、どれも独特な動きです。その背後では、笛や鼓の音や掛け声、地謡の謡が響き渡ります。舞台セットなどはなにもなく色味も少ない檜の板の舞台の上で演じられる花見の一場面。謡などを聴いても物語の内容を把握することはできませんでしたが、迫力があり何とも想像力を掻き立てられます。

初めての能鑑賞で色々と物珍しく、あちこち見渡しているうちに30分ほどの上演時間はあっという間に過ぎてしまいました。地謡、シテ方、囃子方の順に入場した時と同じ経路をたどって退場していきます。それがあまりに自然な流れだったため、終わったと確信できたのは舞台から誰いなくなった後でした。

アンコールやカーテンコールなどで出演者と観客が感動を共有するコンサートや他の演劇とは全く異なるあっさりとした終わり方で、観客はそれぞれに自分のなかに残る余韻に浸っているように見受けられました。

半能につづくプログラムは、チェロ奏者の住野泰士さんによる、バッハの無伴奏チェロ組曲の演奏。中央に敷かれた赤いカーペットの上でチェロを奏でる姿は、能舞台にとても良く映えます。また演奏者と客席の距離も近すぎず遠すぎもせず、素晴らしい演奏をくつろいだ雰囲気の中で堪能することが出来ました。

 

多くの人達にささえられてきた能楽堂

能衣装と花芸安達流による花

花芸安達流 二代目主宰・安達曈子さんの手により花で飾られた山本能楽堂の一室

プログラムが終わると、希望者みんなで国登録有形文化財である建物の内部を見学させて頂きました。山本能楽堂の山本佳誌枝さんによると、山本能楽堂は多くの方々の支援で戦後いち早く再建されたそうです。支援者には松下幸之助も名を連ねています。

能舞台は備蓄されていた上質のヒノキ材を使って建てられました。しかし、奥の楽屋部分の建物は、戦後の資材不足のため廃材などを再利用して建てられており、屋根裏の梁や柱を見ると、古いほぞ穴などが目に留まります。

そんな山本能楽堂の建物は耐震性の不安などもありましたが、2006年に「国のたから」として登録有形文化財の登録を受けたことから、国の初めてのモデル事業となり、多くの個人、企業の支援を受けて2011年から3年間耐震補強を含めたリニューアル工事が行われました。建物内をぐるりと見学することで、歴史が刻まれた部分とモダンな部分が対峙するユニークな建物なのだということが分かります。

参加した観客の方々も建物の内部を見学しながら、花芸安達流 二代目主宰・安達曈子さんの手により飾られた部屋ごとに趣の異なる花々に、感嘆の声を上げながらじっくりと眺めたり写真に収めたりと思い思いに楽しんでいました。

 

相互理解を深める山本能楽堂の海外公演

お話を聞かせていただいた 山本能楽堂の山本 佳誌枝さん

見学時間も終わった後、山本佳誌枝さんからお金をまわそう基金でも助成している山本能楽堂さんの海外公演などについてお話を伺いました。

山本能楽堂では、ブルガリアからの留学生ペトコ・スラボフさんとの出会いがきっかけとなり、2011年のブルガリアでの公演をかわきりに東ヨーロッパを中心とした能の海外公演を積極的に行ってきました。特にヨーロッパ三大演劇祭の一つ、ルーマニアのシビウ国際演劇祭には2016年以来、毎年招聘を受けて出演しています。4年連続となる今年も6月「鉄輪(かなわ)」「巻絹(まきぎぬ)」といった能を上演し、非常に高い評価を得ました。

2019年6月のシビウ国際演劇祭での一場面

2019年にはシビウでの公演の他、秋にブルガリア第二の都市プロブディブと首都ソフィア、そしてマケドニアの首都スコピエでの公演が予定されています。

特に「欧州文化首都2019」に選ばれたプロブディブでの公演では、バルカン半島の人々に親しまれているギリシャ神話「オルフェウス」を題材にブルガリアの人達と共同制作をした新作能の上演を予定しています。この作品にはブルガリアの国民的女優や子ども達も出演する予定です。

日本の伝統芸能である能とギリシャ時代から語り継がれている神話、それぞれの国で大切にされてきた文化をお互いに協力しながら融合させるこの取り組みは、お互いの文化への理解を深め多様性を認めあうことで平和な世界を目指す、山本能楽堂の想いを形にした取り組みだと思います。また、この新作能「オルフェウス」は能の力でSDGsのゴールを目指す作品にもなっています。一体どの様な舞台になるのか、今から楽しみです。

 

『能』を観に行きませんか?

 

帰り際、建物から一歩外に出て周りを見渡すと、一気に日常に引き戻されたような感覚になりました。裏通りにある建物の壁一枚向こうにひろがる非日常の世界が、とても身近であり贅沢なものに感じられました。

伝統芸能の中でも特に能は、敷居の高い印象がありました。しかし今回の訪問を通して、能をもっと気軽に楽しんでいいんだということが分かりました。

山本能楽堂さんでは、はじめての方でも楽しめるプログラムが定期的に開催されています。映画に行くのもいいですが、たまには非日常を楽しみに能を観に行くのは如何でしょうか。

 

~ご支援のお願い~

お金をまわそう基金では、公益財団法人山本能楽堂への寄付を受け付けています。
頂いた寄付は、山本能楽堂によるブルガリア・マケドニアでの海外公演の渡航費等に充てられます。

皆様からのご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。

・頂いた寄付は全額を公益財団法人山本能楽堂へお届けします。

・お金をまわそう基金からの寄付は税制優遇措置の対象となります。

 

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