中高生の未来に種をまく~ハーベストのキャリアセミナー

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中高生の未来に種をまく~ハーベストのキャリアセミナー

2025年11月、NPO法人ハーベストのキャリアセミナーを見学するため、宮城県立泉高等学校(仙台市)に伺いました。

ハーベストは「生き方」や「働き方」といったテーマを切り口に、中学生や高校生が自らの心に「自分はどうありたいか」という問いを立て、将来について考える力を育むキャリアセミナーを、授業の一環として実施しています。

中高生が進路や将来について考えるとき、不安や焦りを感じることは決して珍しくありません。
「何になりたいかわからない」
「自分には特別な強みがない」
「失敗したらどうしよう」
――そんな思いを抱えながら、日々悩んでいる生徒も多いのではないでしょうか。

このキャリアセミナーでは、そんな生徒たちに向けて、地元の社会人ボランティア講師たちの多様でリアルな経験を伝えています。

華やかな成功体験ではなく、迷い、立ち止まり、遠回りをしながら自分の道を見つけてきた「誰かの等身大のストーリー」こそが、将来を考えるきっかけになるからです。

講師のみなさんが参加するミーティング

この日のキャリアセミナーは1年生と2年生の合同授業として行われ、約400名の生徒と35名の社会人講師が参加しました。インフルエンザの影響で欠席者も出ていましたが、講師を迎えに来る生徒たちは元気いっぱい。校舎の中は活気にあふれていました。

キャリアセミナーは1コマ50分で2コマ行われます。生徒たちは自分が興味のある講座を2つ選択し、講師のいる教室に向かいます。

今回は35もの講座の中から、佐藤くるみさんの教室にお邪魔し、9名の生徒さんと一緒にお話を伺うことにしました。

講座のタイトルは「遠回りも悪くない。迷いながら進もう」。

佐藤さんのアイスブレークが始まります。少人数ならではの距離の近さで、和やかな雰囲気が自然と生まれていました。

うまくいかない自分を責めた日々

社会人講師の佐藤くるみさん

佐藤さんは高校時代、部活動での指導や人間関係、自身のメンタルの弱さに悩んでいました。
何をしても否定され、どれだけ努力しても認めてもらえない日々。次第に心も体も動かなくなり、「このままでは自分が壊れてしまう」と強い危機感を抱くようになります。部活動はなんとか最後まで続けましたが、その苦しみは心に残ったままでした。

ひとり親家庭で育った佐藤さんは、大学へは奨学金を利用して進学。卒業後は一般企業に就職しますが、社会人2年目までに3度の転職を経験します。

勤務先でうまくいかなくなるたびに、高校時代の部活動の記憶がよみがえり、「自分は逃げる癖がついてしまったのではないか」「周囲からどう思われているのだろう」と、自分を責めていました。やがては外に出ることさえつらくなり、家にこもる時期もあったといいます。

「自分は社会に適応できない人間なのではないか」
そんな思いにとらわれ、将来への不安に押しつぶされそうになっていた――。
佐藤さんは当時をそう振り返ります。

遠回りの中で見つけた「自分に向いていること」

いつまでも無収入のままでいるわけにはいかない。奨学金も返済しなければ…。
そう思いながらも、佐藤さんは「正社員」という働き方に不安を感じていました。

そこで選んだのが、派遣会社への登録でした。
派遣先はコールセンター。クレーム対応を担当することになります。

感情的な言葉を投げかけられることも少なくない仕事でしたが、佐藤さんはこう振り返ります。
「高校時代の経験があったからか、意外と苦手意識はなかったんです」

仕事を続けるうちに、少しずつ心境にも変化が生まれていきました。
相手の感情をすべて自分の責任として背負わなくてもいいこと。
どれだけ誠実に対応しても、理解してもらえない場面があるということ。

そうした経験を重ねる中で、ふと、こんな思いが浮かんだといいます。

「人にどう思われても、別にいいんじゃないか」

環境そのものが大きく変わったわけではありません。
けれど、物事の受け止め方や、自分自身への向き合い方は、徐々に変わっていきました。

その小さな変化こそが、佐藤さんにとって次の一歩を踏み出すきっかけとなったのです。

その後、佐藤さんは働きぶりが評価され、派遣社員、契約社員を経験した後、正社員(総合職)として登用されます。

やがて社員の育成にも関わるようになり、人に仕事を教えたり、成長を支えたりする立場を経験することになりました。

人と向き合い、相手の変化を間近で感じる中で、佐藤さんの中にある思いが芽生えます。
「もしかしたら自分は、こういう“人を育てる仕事”に興味があるのかもしれない」

さらに副業として、不登校の子どもや発達に特性のある子ども、勉強が苦手な子どもたちを対象とした家庭教師にも挑戦し始めました。
一人ひとりの背景やペースに寄り添いながら関わる中で、次第に「人の成長を支えることこそが、自分に向いている仕事なのだ」と確信するようになりました。

遠回りをしながらも、自分の適性や「好き」に気づくことができた――。
現在は社会人6年目。社員教育の現場で、今もなお「人を育てる」仕事に向き合い続けています。

高校生へのメッセージ

セミナーの最後に、佐藤さんは生徒たちへこんな言葉を贈りました。

今は将来が分からなくても大丈夫。
うまくいかないことや遠回りだと思う経験も、あとから必ず意味を持ちます。
周りと比べなくていいし、すぐに答えを出さなくてもいい。
自分のペースで、「これが好きかも」と思えるものを見つけていってほしいです。

真剣な表情で佐藤さんの話に耳を傾けていた生徒たち。
話が終わると、ふっと深い息を吐き出す姿が見られました。

自分自身が辛かった経験を語ってくれた佐藤さんの講座。
それぞれが、佐藤さんの言葉を自分の内側に落とし込み、
「自分はどう生きたいのか」
「どんな道を選びたいのか」
そんな問いと静かに向き合う時間のように感じられました。

生徒たちが胸に抱いた小さな気づきや揺らぎは、すぐに形になるものではないかもしれません。
けれど、その種はきっと、これからの人生のどこかで芽を出すはずです。

ハーベストが生徒たちに届けたいのは、「正解」ではなく「自分で問いを立てる力」です。
今回のセミナーで生まれた問いが、これからの人生を選び取る力につながっていくことを願って、2コマ目の講座に向かったのでした。

NPO法人ハーベストは、中高生たちに多様な価値観や感動をもたらしてくれる社会人との対話の機会を提供しています。キャリアセミナーを通して、彼らが自身の内なる意欲を見つけ、希望を持って未来を選択していくことを目指しています。
みなさまの温かいご支援を何卒よろしくお願いいたします。

若者の希望を呼び覚ます対話の場づくり-社会人との対話促進事業