2025年12月までTBSの日曜劇場で放映されていた『ザ・ロイヤルファミリー』というドラマをご存じでしょうか。
妻夫木聡さん演じる栗須が、馬主である佐藤浩市さん演じる山王と出会うことから始まる、競馬をめぐるヒューマンストーリーです。
このドラマを通して、競馬をより身近に感じた方もいらっしゃることと思います。
日本の馬の6割がサラブレッド
さて、日本には現在、どれくらいの馬がいるのでしょうか。
令和6年時点で、日本国内の馬の飼養頭数は 7万8,000頭。そのうち約6割にあたる およそ4万8,000頭が主にサラブレッドを中心とする競走用の馬です。
サラブレッドの寿命は一般に 25〜30年といわれています。競走馬としてのデビューは2〜3歳、有名馬の引退年齢を見ると、ディープインパクトは4歳、オグリキャップは6歳、キタサンブラックは5歳、アーモンドアイは5歳と、5歳前後で引退する例が多く見られます。
競走馬は、引退後の余生がとても長いのです。
現役時代の競走馬には、「走る」という明確な経済的価値があります。しかし引退すると、その経済的価値は失われてしまいます。それでも、飼料代や獣医療費、日々の世話にかかる人件費、そして馬が過ごすための広い土地は、引退後も変わらず必要です。日本では毎年約8,000頭の競走馬が生まれていますが、その多くは天寿を全うすることなく、その命を終えているのが現状です。
馬のセカンドキャリア
こうした状況を改善しようと、引退競走馬をリトレーニングし、セカンドキャリアへつなげる取り組みが広がりつつあります。
速く走るために調教されてきた馬に、ゆっくり歩くこと、穏やかに人と関わることを教え直し、それぞれの馬に合った第二の活躍の場を見つけていく取り組みです。乗馬だけでなく、ホースセラピー、農場での活用、ホーストレッキングといった観光分野での活躍など、セカンドキャリアの可能性は広がっています。
また、すべての役割を終えた馬が、静かに余生を過ごすための養老牧場も、少しずつ増えてきました。認定NPO法人引退馬協会の「引退馬預託施設INFO」には全国の38施設が掲載されています。養老牧場で暮らす馬たちは、馬を想い、引き取った人たちの支えによって生きています。
かつて日本の社会は、馬に大きく支えられてきました。
農耕馬として、軍馬として、輸送手段として、戦後すぐには 約150万頭の馬が日本で暮らしていたといわれています。しかし機械化・工業化の進展とともに馬の役割は減り、1964年には40万頭、現在では約8万頭にまで減少しました。
私たちの社会は、まだ毎年生まれてくるすべての競走馬を、生涯にわたって支え続けることはできません。それでも、人と馬との接点が増え、馬が果たす役割が社会の中で広がっていけば、より多くの馬がセカンドキャリアへとつながっていくはずです。そして、その中の特別な一頭を、生涯にわたって支えたいと願う人も、きっと増えていくでしょう。
「ザ・ロイヤルファミリー」の最終話で、馬主・山王を支え、その傍らで競馬を見続けてきた栗須が、北海道の日高で「養老牧場」を営んでいる姿が描かれました。
競走馬の生産地として名高い北海道・日高で養老牧場を営み、思い入れのある馬たちの世話をする栗須の姿は、「大切な馬に、幸せな一生を送らせたい」という、馬に関わるすべての人の願いの象徴なのではないでしょうか。