
8月のお盆過ぎ、病院で治療をがんばる子をガチャガチャで応援しているNPO法人プロジェクトサンタの活動に参加させていただきました。
プロジェクトサンタがガチャガチャを設置した病院は各地にありますが、コロナ禍以降多くの病院で外部の人間が病棟に入れなくなっており、それはプロジェクトサンタの関係者も同じです。
今回は大阪府枚方市にある関西医科大学附属病院のこども病棟で夏祭りが開催され、そこでプロジェクトサンタがガチャガチャのブースを出せることになったため、お金をまわそう基金もそのお手伝いをさせていただくことになりました。
現地で目にした入院中の子どもたちのガチャガチャをまわす様子や、病院でガチャガチャが果たしている役割、そしてプロジェクトサンタの目指す社会についてお伝えしていきます。
プロジェクトサンタの活動
プロジェクトサンタは全国の病院に治療や入院をがんばった子が引けるガチャガチャを設置し、長期療養中の子を中心に病院でがんばる子どもたちを応援しています。
がんばった先にガチャガチャが待っていることで、子どもたちはつらい治療に対しても前向きになることができています。
長期入院中の子どもと家族
小児がんや小児難病などで長期間入院している子どもたちは、治療の緊張感や体の動きの制限などのために他の子と比べて子どもらしい時間を過ごすことが難しい環境に置かれています。
そのような環境にいる子どもを元気づけ、世話をするために病院に泊まり込む日々を送る家族も多くいますが、その負担は大きく、場合によっては自分の食事や入浴など生活に欠かせないことまで後回しにせざるを得なくなります。
NPO法人キープ・ママ・スマイリングが2022年に行った調査によると、入院中の子どものために病院に泊まり込んだ家族のうち4人に1人以上が1日あたり「21~24時間」を子どもの世話に費やしたことが分かっています。(※)
このように長期入院は子どもとその家族に大きな負担がかかるため、病院やプロジェクトサンタはその負担を少しでも減らすために様々な企画・活動を行っています。
今回の夏祭りも関西医科大学附属病院の方々が日々の忙しい業務の合間に準備されており、そこには「普段外出できない子どもたちに少しでもお祭り気分を味わってもらいたい」という医療従事者の方々の優しい思いが感じられます。
※NPO法人キープ・ママ・スマイリング「入院中の子どもに付き添う家族の生活実態調査2022」より
こども病棟の本格的な夏祭り
今回訪れた関西医科大学附属病院は、小児がんの治療を行っているほか、院内学級も備えており、長期入院中の子どもたちも多い病院です。
夏祭りはこども病棟に入院中の子どもとその保護者を対象に行われ、看護師やボランティアの方により、お祭りの屋台のような形で様々な体験が用意されます。
開催場所はこども病棟の屋上のため夏の空気を感じられ、提灯まで吊るされてまさに“夏祭り”といった雰囲気。
さらに、お祭りの時間だけは看護師の方々も浴衣姿に。
そのため、私たちが準備のために病棟に入った頃には、看護師の方々が忙しそうな中でもどこか楽しそうな様子で廊下を行き交っていました。
そのような慌ただしくも楽しい空気の中、皆で準備を進めていると、待ちきれない様子で病室から出てくる子も。
この日は風がとても強く、あちこちで書類や景品が舞い上がるハプニングもあったものの、開始時間までにはすべてのブースで準備が終わり、病棟の屋上はすっかり夏祭り会場に様変わりしました。
こうして、いよいよ1年に1回、1時間だけの子どもたちにとって特別な時間が始まります。
夏祭りならではの特別な体験の数々
時間になると、入院中の子がどんどん会場に集まってきました。約30人の子どものほかに保護者の方も付き添いで参加されているため、病院の屋上とは思えないほどの大賑わいです。
多くの子がキョロキョロと辺りを見ながら、まずどのブースに行こうか考えている様子でした。
ガチャガチャのほかにもクリニクラウン(病院を訪れるピエロ)のショーやヨーヨー釣り、射的など楽しい体験があちこちにあるため、目移りしてしまうのも頷けます。
吟味の結果、ガチャガチャに狙いを定めてくれた子も多くいました。手招きしてあげると、まっすぐこちらに向かってきてくれます。
来てくれた子は1歳くらいの小さな子から小学校高学年くらいの大きな子まで幅広く、病気やけがの種類も様々です。
小さい子や手にうまく力が入らない子はガチャガチャをまわすのに苦労していましたが、それでも「ガチャガチャしたい!」という意思は強いようで、保護者の方の力も借りて一生懸命ハンドルを握っていました。
そのような子どもたちの姿を見ていると、改めて子どもたちにとってのガチャガチャの魅力の大きさに気付かされます。
いつも子どもたちに寄り添うガチャガチャ
他のブースからも子どもたちの楽しそうな声が聞こえてきましたが、光るおもちゃなどお祭り風の景品を多く用意したガチャガチャブースも負けず劣らず大盛況でした。
早速出てきたおもちゃを光らせる子もいて、子どもたちにお祭り気分を味わってもらうことができたと思います。
その上で、ガチャガチャが他の体験と異なるのは、「いつも病院にある」という点です。
入院中の子どもを応援する取り組みは病院内外の様々な人・組織によって行われていますが、多くは今回の夏祭りのように「イベント形式」です。そのため、子どもたちはそれを楽しみに過ごせますが、どうしても体験の機会は限られます。
一方で、ガチャガチャは病院にあり続け、イベントの有無に関係なく辛い治療の度に支えてくれるため、常に子どもたちに寄り添えるのが特徴です。
実は、このガチャガチャのプロジェクトそのものが「クリスマスなどのイベントだけでなく、どうにかして日常的に子どもたちを応援できないか」という思いから始まっています。
このことからも、ガチャガチャはイベントとイベントの間にも子どもたちにワクワクした時間を届ける大切な役割を担っていることが分かります。
ワクワクを“楽しく”届ける輪の広がり
プロジェクトサンタには、活動をする上で大切にしている思いがあります。
それは、「支援先の子どもたちだけでなく、運営する人や支援する人も皆が楽しく参加できる形で活動を続けていきたい」というものです。
無理や我慢が伴うチャリティは長続きしないという考えから、支援のお願いも強く押し出すことはありません。
それでも、ガチャガチャを全国の病院に広げていく中で、活動に共感して支援してくださる方は少しずつ増えています。
支援の内容も様々で、純粋な寄付、ガチャガチャの景品の提供、寄付付き商品の共同開発、活動へのボランティア参加など、それぞれの方が無理なく楽しくできる範囲で協力してくださっています。
今回の夏祭りでも特に支援をお願いすることはなく、
「ガチャガチャを運営しているプロジェクトサンタという団体です!お見知りおきを!」
ということだけを付き添いの保護者の方にお伝えしていました。
そのようにお知らせしていたところ、ある保護者の方から、
「このガチャガチャを運営されているんですか?!どうやったら支援できますか?」
という反応をいただきました。
入院中のお子さんをずっと見てこられたからこそ、病院でのガチャガチャの力を理解してくださったのかもしれません。
ガチャガチャをまわして喜ぶお子さんの様子を見て、その方自身もとてもうれしそうにされていました。
そして、様々な支援の方法をお伝えすると、どの方法なら支援しやすいか考えてくださっているようでした。
こうしてまた一人、共感してくださる方が増え、活動を広げていきやすくなったように思います。
誰もが誰かを楽しく応援できる社会へ
今回、夏祭りでのお手伝いを通じて印象的だったのは、「参加者が自然と全員笑顔になっていた」ということです。この「全員」には、子どもだけでなく、医療従事者、保護者、そして私たちボランティアも含まれます。
このお祭りはきっと純粋に「子どもたちを応援したい」という思いで企画されたものだと思いますが、子どもたちの笑顔を見るうち(あるいは想像するうち)に楽しませる側の病院の方々まで楽しい気分になっていったのではないでしょうか。
それだけでなく、子どもの笑顔につられて保護者の方や私たちまで自然と笑みがこぼれます。夏祭りの会場は、そのような笑顔があふれる空間になっていました。
そして、プロジェクトサンタは、このように誰かが誰かを楽しく応援できる機会をもっと増やし、もっと様々な場面に広げていくことを大きな目標としています。ガチャガチャを通じて子どもたちに寄り添い続ける活動も、そうした思いのもとで取り組まれています。
支援のお願いを強く押し出さないプロジェクトサンタですが、そうした中でも支援してくださる方は、きっと楽しみながら活動を見守られていることでしょう。
まだ支援されたことのない方も、痛いのを我慢して注射を受けた子が、ガチャガチャで笑顔になる場面をぜひ想像してみてください。
自然と「がんばる子を応援したい!」という気持ちになりませんか?
一度支援した後も、思い起こす度に「何が出たかな?」「何人に届いたかな?」と楽しい気分になること間違いなしです!
無理なく応援してくださる方が増えていくことで、誰もが誰かを楽しく応援できる優しい社会に近づきます。
私たちも、「がんばる子を応援したい!」という素直な気持ちを大切に、引き続き“楽しく”プロジェクトサンタの活動を応援していきたいと思います。
プロジェクトサンタは、病院で治療や入院をがんばる子どもたちのために寄付を募集しています。
ご寄付はガチャガチャの景品となって子どもたちに届きます。
皆様の温かいご支援を何卒よろしくお願いいたします。