認定特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会の調査によると、2024年の個人寄付の総額は2兆261億円となり、過去最高額を更新しました。
このうち、ふるさと納税が全体の63%を占め、金額にして1兆2,728億円。ふるさと納税を除いた一般的な寄付は7,533億円でした。
2016年の一般的な寄付額は4,912億円であったことから、この8年間で約1.5倍に増加していることになります。


また、「返礼品がない」「返礼品を主目的としない」ふるさと納税は全体の9.2%とされており、これを含めると、リターンを求めない、いわば純粋な善意による寄付の総額は約8,700億円と推計できます。
この額はどれくらいの大きさなのでしょうか。
ベタな例えとして、東京ドームと東京スカイツリーで比較してみましょう。
東京ドームの建設費は350億円でした。なので、8700億円は東京ドーム25個分の建設費に相当します。
東京スカイツリーのタワー本体の建設費は600億円でした。なので、スカイツリー15本分に相当します。
企業でいうと、2025年8月期の良品計画の売上高は7,846億円でした。善意の寄付は、全国の無印良品の店舗すべての年間売上を上回る規模です。
産業市場と比べてみると、2024年の日本の動画配信市場は5,930億円、音楽配信市場は1,233億円で、合計7,163億円でした。
2024年の回転ずし市場は約8,200億円でした。
私たちは、動画配信と音楽配信を合わせた市場を超える金額、回転ずし市場に匹敵する金額を社会に回していることになります。
では、その金額で何ができるのでしょうか。
人口約156万人の神奈川県川崎市の令和6年度一般会計歳出は8,621億円です。
私たちの一年間の寄付で、大都市を一年間運営することが可能なのです。
これだけの大きな額の寄付は、実際には何に使われているのでしょうか。
寄付先として突出して大きいのは、日本赤十字社、日本ユニセフ協会、赤い羽根共同募金です。2024年にはこれら3団体に合計で870億円が寄付等として寄せられました。個人の寄付の一割強を3団体で占めているのです。
そのうちの115億円が日本赤十字社に届けられた災害義援金でした。日本ユニセフ協会には293億円が寄せられました。
国際協力と災害援助が日本の主要な寄付の受け皿となっているのです。

日本において、個人が寄付する額は急速に増えており、寄付は確実に私たちの身近なものになりつつあります。寄付の総額を見ると、他の産業等と比較しても、大きな規模のお金が動いていることがうかがえます。
一方で、寄付の大きな受け皿となっている3団体を見ると、使途が明確な災害義援金を除くと、使途を寄付先に委ねる寄付であるとも言えます。私たちはまだ「何のために寄付をすればいいのか分からない」という状況から抜け出せていないのかもしれません。
これから私たちに求められているのは、自らの寄付の目的を自分の言葉で見つけていくことなのではないでしょうか。