団体が始まったきっかけや活動への思いを生の声でお届けすべく、助成先団体の代表者の方へお話を伺うShall we KIFU?代表インタビュー。
第5回は、NPO法人ユースコミュニティーの皆さんにお話を伺いました。
ユースコミュニティーは、「自由塾小学生クラス」という名前で東京都大田区で経済的に困難を抱える家庭の小学生に対する学習支援と居場所作りを行っています。
「自由塾小学生クラス」は、大田区内の3会場で基本的に毎週1回それぞれ決まった曜日に実施されており、全体で約30名の子どもたちが通っています。
今回お話しくださったのは、代表理事の濱住 邦彦さん、金曜クラス教室長の中間 陽太さん、ボランティアの楠田 薫さんの3名です。
活動のきっかけ
そして、この社会課題解決に取り組むために、実際にそういった子どもたちに勉強を教える他団体での活動にも参加しました。
活動場所も今と同じ大田区でしたが、当時所属していた団体が任意団体であったため、活動の規模には限界がありました。
そこで、活動の幅を広げ、より多くの子どもたちをより多様な形で支援するために新しく団体を立ち上げることにしたというのが、活動のきっかけです。
学習支援として、子どもたちの自主的な勉強に寄り添う様子。
子どもたちとボランティアの方の人数がほぼ同じなので、わからないことは気軽に質問できます。
事業の特徴
その非認知能力を伸ばすために、アクティビティーの一つとして将棋を行っています。
将棋はテレビゲームなどと比べて地味な印象がありますが、次から次へと新しいものに手を伸ばすのではなく、腰を据えて一つの事に取り組む経験として、その後もずっと残るものだと考えています。
その他にも、百人一首、小物づくり、ボードゲームなど子どもたちの特徴に合ったものを選んで行っています。
アクティビティーの時間に対局。大人も子どもも真剣です。
社会人の方もボランティアとして参加していますが、自由塾小学生クラスを開催している3会場全てで大学生が教室長になっています。
子どもたちとの関係で心がけていること
子どもたちと接するうえで心がけていることはありますか?
無理やりなボケも全部拾ってツッコんであげています(笑)。
子どもたちの年により近い、高校生のボランティアが多いのも影響しているかもしれません。
自由時間中に子どもたちにもみくちゃにされる中間さん。
子どもたちからは「なかまにぃ」と呼ばれています。
保護者の反応
保護者の方はどのような方がいらっしゃるのでしょうか。反応についても教えてください。
そのようなご家庭の保護者の中には、一人親や外国にルーツを持つなどの理由で周囲に頼れる人がいない方も多くいらっしゃいます。
そうしたこともあり、私たちの活動について保護者の方からは「子どもの様子や勉強を見てくれて助かっている」、区からも「紹介してよかった」といった声をいただいています。
また、団体でも子どもたちの送り迎えなどを行っていますが、保護者の方にもできる限り協力していただきながら事業を行っています。
活動の課題
一番子どもたちをよく知っていてよい関係性を築いている教室長に頼りつつ、他のボランティアも少しずつ関わりを深めていきたいですね。教室によってはボランティア間で情報共有なども進めています。
それでも、情報共有によって対応できるボランティアの方が増えていくといいですね。
代表の濱住さんの視点から、事業を進める上での課題はありますか?
また、保護者の方に非認知能力を伸ばすことの重要性を理解してもらうことも難しく、課題と感じています。
ひとりひとりの子のために考えられた非認知能力を伸ばすための方法は、きっととても大きな効果を出してくれることでしょう。
成長したお子さんの姿を見ることで、保護者の方にもその大切さを理解してもらえるのではないでしょうか。
今後のビジョン
どんな子でも子どもらしくいられるような場所であり続けられるように努力していきます。
経済的な困難に直面する子どもたちも子どもらしく、かけがえのない時間を過ごして欲しいと思います。
勉強は習慣として自然と行い、自由時間は思いっきり遊ぶ子どもたち。
経済的に困難を抱える家庭の子どもたちが、教室でのびのびと子どもらしく過ごせていることが、彼らの生き生きとした表情に表れていました。
**編集後記**
インタビューの後には実際の活動の様子を見学させていただきました。
中間さんのお話にもあった通り、小さなことにも周囲からしっかり反応してもらえるため、子どもたちは勉強から遊びまでいろんなことに積極的に挑戦し、その結果に関わらずボランティアの方とのやり取りが楽しくて仕方がないといった様子を見せてくれたのが印象的でした。
学習やアクティビティーを通して子どもたちに子どもらしい時間を過ごしてもらうこと、それを支える年の近いボランティアの方と子どもたちの関わり、そのどちらも大切にされているからこそ、「自由塾小学生クラス」は子どもたちにもボランティアの方々にも愛される居場所になっているのだと考えられます。
内閣府の調査(※)によると、家庭の経済状況の差は子どもの学力の差や情緒の課題としても表れています。
具体的には、世帯収入が低くなるにつれて子どもが塾に通う割合や1日あたりの勉強時間も短くなることや、世帯収入の低い家庭の子どもほど保護者との関係でつらい経験をし、他の子どもたちと良好な関係を築きにくい傾向にあることが示されており、周囲の環境が子どもたちの学力・情緒に大きな影響を与えていることが考えられます。
そして、学力と非認知能力のどちらも伸ばしたいという自由塾小学生クラスの考え方や、年の近いボランティアの方々による子どもたちと同じ目線での関わりは、そのような課題に直接向き合うものです。
周囲のお兄さんやお姉さんたちに見守られて楽しく様々な経験を積んだ子どもたちなら、きっとたくましく育っていくことでしょう。
ユースコミュニティーの取り組みが広く理解され、今回子どもたちが見せてくれたようなとびきりの笑顔がより多くの地域に広がっていくことを願っています。
現在、ユースコミュニティーは自由塾小学生クラスへの寄付を受け付けています。
いただいた寄付は、子どもたちの学習支援・居場所作りのために使わせていただきます。
皆様の温かいご支援をよろしくお願いいたします。