現在、4万2000人の子どもたちが、児童養護施設や里親など社会的養護のもとで暮らしています。
子どもたちは、原則として18歳になると自立することを求められます。こうして巣立った若者は「ケアリーバー」と呼ばれています。
18歳で自立した彼らは、生活に必要な費用の一切を自分でまかなわなければなりません。2021年に行われたケアリーバーの全国調査※1では、月々の収支のバランスについて、22.9%のケアリーバーが「支出の方が多い」と回答しています。ケアリーバーの5人に1人が赤字の生活を送っています。

また、東京都のケアリーバーへの調査※2では、自立した直後に「まず困ったこと」として挙げられたうちの2位が「金銭管理(32%)」、3位が「生活費(31%)」となっています。回答者のうちの3人に1人が、自立後にまず「金銭管理」と「生活費」に困っていることが分かります。
18歳の若者が、自分一人の力で生活を成り立たせることの難しさがうかがえます。

ケアリーバーが直面するのは、経済的な困難だけではありません。自立してまず困ったことの第一位は「孤独感、孤立感」。「頼れる大人が身近にいない」ことも、ケアリーバーの抱える問題として指摘されています。
自立後、困ったときの相談相手として最も多かったのは施設の職員(37.1%)でした。次いで友人(35.2%)、施設等で生活したことのある友人(34.2%)と続きます。一方で、親は20%、親戚は6.6%にとどまっています。

児童養護施設では、保護者の代わりに日々のお世話をしている施設職員が子どもたちにとって最も身近な大人です。子どもたちが巣立った後も、相談に乗るなどの支援を施設職員が担っているケースは多くあります。
しかし、交流する頻度としては、「1年間に1回もない」が3人に1人と、多くの場合、そう頻繁ではありません。また、同調査では、5.2%が相談できる相手が「いない」と回答しています。
さらに、頼りにしている職員が、異動や退職によって施設を離れることもあります。そうなると、ケアリーバーは相談できる相手を失ってしまうのです。
頼れる人がいない中で、自分で全てをまかなわなければならないという状況は、自立したばかりの若者たちにとってとても大きなプレッシャーです。
一般の家庭であれば、多くの若者は家族に支えられながら社会に出ていきます。その一方で、ケアリーバーは18歳で生活のすべてを自分で背負い、「失敗したら後がない」という危機感を抱えながら生きているのです。
奨学金やアフターケアなど、「ケアリーバー」の自立を支える制度は少しずつ整いつつあります。
しかし、巣立つ彼らの背中を押すのは、制度だけではありません。「困ったら助けてくれる人がいる」、「失敗しても大丈夫」という社会への信頼です。
私たちの社会は、18歳の若者にその信頼を提供できるているのでしょうか。
※1 「児童養護施設等への入所措置や里親委託等が解除された者の実態把握に関する全国調査(令和3年3月)」三菱UFJリサーチ&コンサルティング
※2 「東京都における児童養護施設等退所者の実態調査報告書(H29年2月)」 東京都福祉局