「きょうだい児」の笑顔が広がる旅 ~Lino 沖縄海洋リハビリ体験ツアー2022秋~

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「きょうだい児」の笑顔が広がる旅 ~Lino 沖縄海洋リハビリ体験ツアー2022秋~

2022年10月1日(土)~3日(月)にかけて、NPO法人Linoによる海洋リハビリ体験ツアーが沖縄で開催されました!
お金をまわそう基金も同行させていただきましたので、活動の様子をご紹介します。

海洋リハビリ体験ツアーとは

NPO法人Linoは、重い病気で医療的なケアが必要なお子さんや障がいのあるお子さんとそのご家族のために活動している団体です。

重い病気や障がいのあるお子さんとそのご家族にとって、お子さんと一緒に家族旅行を行うのが難しいため、諦めることが当たり前になっています。
Linoは「海洋リハビリ体験ツアー」という活動で、重い病気や障がいのあるお子さんとご家族が一緒に旅行できるように支援しています。
ツアーでは、看護師を含むボランティアが介助することで飛行機での移動やプールでの遊泳などを安心して行うことができます。

今回のツアーは沖縄県恩納村を目的地とし、1日目プール体験、2日目海洋リハビリ体験、3日目観光及び移動日という旅程が組まれました。
障がいのあるお子さんとご家族が5組、看護師を含むボランティアが6名参加となり、ツアーは総勢17名。
このほか、2日目の海洋リハビリ体験の際は、宿泊先の恩納村で医療的ケアが必要な方や障がいのある方の海での遊泳やアクティビティを介助している団体の「チャレンジドオーシャン」が介助・指導してくれました。

Linoのツアーにおける「きょうだい児」

今回のツアーでは、参加されたOさんファミリー「そうくん」に注目して取材を行いました。
Oさんファミリーは小学生のお姉ちゃんと「そうくん」、お母さんの3名での参加です。お姉ちゃんに障がいがあり、「そうくん」に障がいはありません。

重い病気や障がいのある兄弟姉妹を持つ「そうくん」のようなお子さんは「きょうだい児」と呼ばれています。
障がいのあるお子さんのいるご家族への社会の支援は十分でなく、ご家族に大きな負担があります。
このため、「きょうだい児」が兄弟姉妹の介助を手伝ったり、介助をしている親の代わりに家事を担うことがあります。
親は病気や障がいのあるお子さんの介助に多くの時間を割かなければならないため、「きょうだい児」は親に構ってもらいたい気持ちを我慢しなければならない場合があります。
その他にも、自分が介助を担う可能性のある将来についてなど、複雑な悩みを抱えることも多く、大人になってからも生きづらさを抱えることがあります。

現代社会において、障がいのあるお子さんの親が地域の人に助けを求めることは難しく、結果として負担が親に集中してしまいます。
親の負担が非常に大きいため、そのしわ寄せを「きょうだい児」が受けてしまう場合があります。
そのため、社会が家族にとって助けを求められる場所に変わり、親の負担や「きょうだい児」が抱える悩みを減らしていく必要があります。

「そうくん」とご家族を通して、Linoがどのような「場所」であるか考えました。

プールで交流

1日目は宿泊先のホテルの屋外プールで遊泳体験が行われました。
海洋リハビリ体験の前にお子さんたちがプールで水に慣れることができます。
ボランティアや家族間で自然に交流が生まれるのも、この体験の魅力です。
既に10月でしたが、沖縄はまだまだ暑く、気持ちよくプールに入ることができました。

プールではOさんファミリーの3人も大はしゃぎの様子でした。
お母さんによると、障がいのあるお姉ちゃんが大きくなってからは、お姉ちゃんを施設等に預けなければ旅行に行くことができませんでした。
そのため、「家族旅行にお姉ちゃんだけ連れていけなかった」とのことです。
3人一緒の旅行は貴重なため、家族で交流する時間を思う存分過ごしていました。
「そうくん」が2人に水をかけると、お姉ちゃんとお母さんからはキャーキャーと歓声が上がり、家族全員に笑顔が広がりました。

お母さんとお姉ちゃんに水をかける「そうくん」

参加者同士の交流が進む中で、「そうくん」はこの日出会った小学生ボランティアの「あっくん」と意気投合。
皆の周りを「あっくん」と2人で自由に楽しく泳ぎまわりました。
楽しく遊べる相手を見つけられた「そうくん」は、お母さんがお姉ちゃんのお世話をしている間も満開の笑顔で過ごしていました。
「あっくん」は、ボランティアのお母さんと一緒に参加しており、Linoの活動に何年も前から参加しています。
「そうくん」より少し年上の「あっくん」は、「そうくん」をリードしつつも常に追いついてもらえるような距離感で泳いでいました。

2人で遊ぶ「そうくん」(左)と「あっくん」(右)

障がいのあるお子さんとないお子さん、ご家族やボランティアも全員が同じプールで楽しい時間を共有しました。

海洋リハビリ体験当日

2日目は宿泊先のホテル前の「タイガービーチ」で海洋リハビリ体験が行われました。
天気は快晴で、絶好の海日和でした。

海での活動はLinoのボランティアのほかに、恩納村で障がいのある方とその家族が海で楽しめるように活動している「チャレンジドオーシャン」の専門スタッフが介助してくれました。
「そうくん」のお母さんも、お姉ちゃんの船への乗り降りの際などに専門スタッフによる介助を受け、安心して移動できていました。

船の乗り降りや車いすへの移動など、お母さん1人では大変なことも専門スタッフが介助

ボランティアや専門スタッフがお姉ちゃんを見てくれるため、お母さんはボードに乗ってパドルを漕ぐSUPというアクティビティに「そうくん」と2人で挑戦。
まだまだお母さんに注目してもらいたい年頃の「そうくん」の思いも叶えられた様子で、バランスを崩して2人でひっくり返った際もとても楽しそうでした。

初めてのSUPに挑戦する「そうくん」とお母さん

「きょうだい児」の「そうくん」もご家族やボランティアの周りで「あっくん」と遊びながら楽しい時間を過ごしていました。

お母さんからは、
「『あっくん』がいてくれて本当に良かった。普段の旅行はお姉ちゃんが一緒に行けないから『そうくん』の相手に集中できるけれど、みんな一緒だとそうはいかない。どちらかの相手をしていても、もう1人を誰かに預けられて安心」
という声があり、「あっくん」のおかげで「そうくん」が楽しく過ごせるだけでなく、お母さんも安心して楽しめているのが伝わってきました。

「あっくん」も「そうくん」と2人で砂浜から海まで時間の限り遊び尽くし、沖縄の海を満喫できているようでした。

年上の「あっくん」(左)は遊び相手であると同時に、「そうくん」(右)を常に見守るお兄さん役でもあります。

誰も取り残されない世界へ

取材を通して「きょうだい児」の「そうくん」とそのご家族を見てきましたが、「そうくん」がやりたいことを我慢している様子やお母さんの困っている様子はありませんでした。
「そうくん」は、周囲の人が見守ってくれるなかで自由に「あっくん」と遊ぶことができ、お母さんと一緒の時間も取れたことで、自分の思いを押し込めることなく過ごすことができたのではないでしょうか。
また、お母さんの「(お子さんを)他の人にまかせられて安心」という言葉からも、Linoのツアーが気軽に介助を頼める体制で、親の負担を大きく減らしていることが伝わってきました。

Linoは目指すべきビジョンとして、以下の言葉を掲げています。
「健常者・障害者という垣根をなくし、自然と人が集まり、共存・助け合う世界をつくる~Diversity & Inclusionな世界の実現~」

出会ったばかりの「そうくん」と「あっくん」が自然と遊び、お母さんが「そうくん」の相手をしてあげるときにはお姉ちゃんを周りの人が見てくれる―――海洋リハビリ体験で様々な立場の人が共存する様子は、Linoが目標とする世界そのものでした。

普段見過ごされがちな「きょうだい児」と呼ばれる「そうくん」のような子も、Linoでは自然と受け入れられ、我慢することなく過ごすことができています。
それは、Linoの活動に参加した人が、それぞれできることで周囲の人を助けているからにほかなりません。
小学生から大人まで、皆が手を差し伸べているからこそ、誰も取り残されることなくLinoの輪に入ることができます。

Linoの輪が社会全体に広がれば、重い病気や障がいのあるお子さんとそのご家族が抱える負担はずっと少なくなるはずです。
多様な人が、様々な人に手を差し伸べる事で、Linoの目指す世界の実現に一歩近づきます。
「Linoの活動が広がることで、状況・立場の違う様々な人々が皆笑顔になれる」
今回のツアーで様々な人の笑顔を見ながら、そのような思いを強くしました。

Linoへの支援について

Linoの活動・理念に共感された方は、ボランティアとしてLinoを応援することもできます。
医療的ケアが必要な方や障がいのある方でも映画館で映画を鑑賞できるようにLinoが開催している「インクルシネマ」という活動では、ボランティアを募集しています。
Linoの活動を体験したい方はぜひご応募ください。

映画を使ったSDGs活動!《障害者も映画を楽しめる空間》を一緒に作りませんか by Lino (activo.jp)

Linoと一緒にインクルーシブな世界を作りませんか?皆様のご参加をお待ちしています。

◎JANPIA様からも取材があり、記事を作成していただきました。
誰もが支え合える社会を目指して。NPO法人Linoの沖縄海洋リハビリツアー!