新年あけましておめでとうございます。新春を迎え、皆様のご健康とご多幸を心からお祈り申し上ます。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。
さて今回の「Shall we KIFU?」は、新春の特別号として、当財団の代表理事 澤上篤人からのメッセージをお届けします！
お金をまわそう基金を創った目的
「お金をまわそう基金」を創った一番の目的は、なんだったと思いますか？日本に寄付の文化を広めること？そうなのですが、実はその先にもっと大きな「やらなければならない」ことがあるのです。
それは、日本経済の活性化です。日本経済が成長力を取り戻し、みなが元気になり、若い人たちが将来に夢と希望をもてるようにすることです。
1990年代に入ってからというもの、日本経済はずっとジリ貧と長期低迷に喘いでいています。「失われた10年」といわれた日本経済の停滞が、いつの間にか30年にも及んでいるのです。
この間に、中国など新興国の経済が高成長を続けたことは誰もが認めるところです。意外と気づいていないが、米国やヨーロッパの経済も２～４倍に伸びているのです。ひとり、日本だけが世界の成長から取り残されて、ジリ貧の道をたどってきたというわけです。
信じられますか？あれほど米国では所得格差の問題、そしてEUでは失業率の高止まりが騒がれてきたのに、米国やEUの国民は平均すると、この30年間で２～４倍の所得増加にあずかっているのです。ひるがえって日本においては、統計数字のみならず生活実感からも、所得はほとんど伸びていないです。
日本は、国民がお金をつかわなくなった
この差は、どこから生じているのでしょうか？よくいわれるように、日本の政治や経済政策が利権や既得権の擁護に走り、問題の先延ばしに終始しているだけではありません。
もっと大きな問題が、日本経済に重く覆いかぶさっているのです。それは、「国民がお金をつかわなくなった」という点です。ちなみに、この30年間で国民の預貯金額は560兆円も純増しています。国民の所得は増加していないのに、預貯金額だけが560兆円も積み上がったわけです。
これは、80年代までの高度経済成長期ならば消費にまわっていた分です。560兆円もの資金が消費にまわっていたのなら、日本経済は単純計算ながら年平均3.4％の成長を遂げたことになります。つまり、この30年間で日本経済は2.7倍の規模になっていたはずです。なんとも惜しいことと思いませんか？
これが成熟経済のワナです。国民がより豊かな生活にあこがれて、懸命に働いては家電製品などの耐久消費財をひとつずつ買い揃えていっている間は、どこの国も高度成長を続けます。ところが一国の経済が高度経済成長期を経て成熟化してくると、国民の消費はガクンと落ち込みます。
国民は欲しかったモノをほとんど手に入れ、以前ほどはお金をつかわなくなるのです。そういった、せいぜい買い替え需要が主体の成熟経済に突入すると、経済成長率はガクンと落ちてしまうのは避けられません。
モノではないことに、お金をつかおう
そこで大事になってくるのが、モノではない方向に意識してお金をつかうことです。経済はお金がつかわれさえすれば、いくらでも元気になります。そうなのです、成熟経済日本の活性化には、なんとしても国民の間で「お金をつかう文化」を高めていく必要があるのです。
文化・教育・芸術・スポーツ・技術・寄付・NPO・ボランティアといった分野で、どんどんお金をつかってくれるようになると、そちらの方向で新しい産業も生まれます。雇用も増加します。
いま日本社会は、多くの問題を抱えています。貧困をはじめとして社会的不合理が山積みしているところへ、コロナ禍が襲ってきました。なのに、国は借金まみれでなかなか対策予算をまわせません。
こんな時に、936兆円もある（日銀速報、2020年9月末）個人の預貯金マネーが、大きな役割を果たすことになるのです。たとえば、その一部でも寄付にまわってくれると、日本は一気に明るくなります。
ちなみに、預貯金の１％が寄付にまわるだけで、その寄付を受けた人たちはなんらかの消費をします。その消費が日本経済を即座に1.7％も成長させてくれるのです。
もし、預貯金の３％が寄付にまわれば5.1％の成長です。それがまわりまわって国民全体の所得増につながっていきます。誰にとっても喜ばしいことです。
ことほど左様に、お金を意識してつかうことが重要です。ちょうど、1970年代80年代にヨーロッパや米国が成熟経済に突入し、長い間の低迷で学び切り抜けた道を日本も辿るのです。
日本で寄付という文化を高めていくためにも、「お金をまわそう基金」は今年も頑張って参ります。
公益財団法人お金をまわそう基金
代表理事 澤上 篤人
お金をまわそう！