子どもの貧困と学習支援

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子どもの貧困と学習支援

2月は受験シーズンです。多くの子どもたちが試験に向けて頑張っているこの時期、子どもの貧困と学習支援の必要性についてご紹介します。

 

子どもの貧困

国民全体の所得を順番に並べてちょうど真ん中となる収入の半分に満たない収入で生きている状況を「相対的貧困」といいます。日本では、貧困のラインは127万円。二人世帯の場合は180万円、3人世帯の場合は220万円に満たない所得で暮らしている人が「貧困」とされています。

日本においては、「子どもの貧困率」は11.5%。9人に1人の子どもが貧困となっています。一人親世帯においては、「子どもの貧困率」は44.5%。2人に1人の子どもが貧困となっています。

子育て世帯を対象とした調査においては、「過去1年間に食料を買うお金がなかった」に「あった」との回答はふたり親世帯で11%、母子世帯では31.6%となっています。「過去1年間に衣類を買うお金がなかった」に「あった」との回答はふたり親世帯で14.9%、母子世帯では39.5%となっています。

貧困ライン付近や貧困ラインに満たない所得の家庭では、生活に必要な食品や衣類を買うのが精いっぱいな状況にあることがうかがえます。

 

貧困の連鎖

「子どもの貧困」には、貧困が世代を超えて次の世代にも連鎖するという「貧困の連鎖」の問題があります。収入が少なくて生活が厳しい家庭に生まれた子どもは、教育を受ける機会に恵まれず、親と同様に収入の少ない職業に就かざるを得ず、貧困が世代を超えて連鎖するのです。

子どもが「貧困の連鎖」から抜け出すために、教育は大きな役割を果たします。学歴が収入を決めるわけではありませんが、進学することは、経済的な自立を果たし、より安定した経済基盤を築くことにつながります。

 

高校無償化

2010年から、所得制限はあるものの、子どもたちの高等学校の授業料が、公立高校においては無償化、私立高校においては一部負担となっています。正式には「高等学校等就学支援金制度」といい、本来は保護者が学校に支払う高校の授業料について、国が都道府県や学校法人などの高校を設置している者に就学支援金を支払うことで保護者の負担が無くなるあるいは軽減されるという制度です。

この制度によって、生活に苦しい家庭の子どもの公立高校進学による授業料の負担は無くなりました。

それでは、高校無償化によって、子どもたちの高校進学の問題は解決したのでしょうか。

 

経済格差の与える影響

授業料が無償になるとしても、入試に合格しなければ高校に入ることはできません。高校入試をひかえる中学3年生を対象とした調査では、全国で約6割、大都市においては約7割の子どもが学習塾や家庭教師を利用しています。

学習塾の先生や家庭教師の先生に教わっていますか

(インターネットを通じて教わっている場合も含む)

文部科学省「令和5年度全国学力・学習状況調査」より当財団作成

 

学習机や参考書、家庭教師や通信添削、学習塾の費用など、学校外での学習のための掛かる「補助学習費」は2018年には公立学校に通う中学3年生では年間36万3000円、2023年には年間39万円に上っています。

文部科学省「子供の学習費調査」より当財団作成

生活に必要な食品や衣類にも事を欠く家庭においては、学習塾の費用を捻出するのは困難です。

子育て世帯を対象とした調査ではふたり親世帯の11%、母子世帯の36.3%が「負担できない」と回答しています。

 

学習支援の必要性

自らの進路を初めて選択することとなる高校への進学にあたり、多くの同級生が塾に通っている中で、経済的な理由で学習塾に通えない15歳の子どもは自分の力だけで経済格差によって生じる学習機会の格差を埋めなければならないのでしょうか。

貧困にある子どもは、同世代の多くの子どもが持っているものを持つことができなかったり、多くの子どもがしていることをできず、「どうして自分だけ」という経験を重ねています。また、経済的な問題だけでなく、家庭環境など様々な背景を抱えていることもあります。そんな彼らが高校に進学し、貧困の連鎖から抜け出し、夢を抱くためには、学習を支援し、明るい未来を思い描くための手伝いが必要なのです。

現在、国によって高等学校の無償化が実現しています。しかし、経済的な困難を抱える子どもたちが進学を実現し、明るい未来に向かって進むには、学習や精神面を支えるきめ細やかな支援も求められているのです。