「孤育て」は、育児する中で、社会や人とのつながりから切り放されて孤立している状態を表わす言葉です。この言葉が登場して20年以上が経ちましたが、今なお、多くの親御さんが孤独を抱えながら子育てしている現状があります。
子育て中の孤立や孤独
地域コミュニティアプリを運営するPIAZZA株式会社が2024年に実施した調査によると、子育て中に孤立や孤独を感じたことがあると回答した女性は74.2%でした。子育て中・子育て経験者の4人に3人が「孤育て」を経験しているのです。

株式会社PIAZZA 「孤育てに関するアンケート」調査
どんな時に孤独を感じるか、については、「子どもと二人きりでいる時」が最多となりました。女性の回答では、続いて「大人と話す機会が無い」が5割となっています。

株式会社PIAZZA 「孤育てに関するアンケート」調査
また、「子育て仲間の輪に上手く入れない」、「実家・義実家に頼れない」、「近所に悩みを共有できる友達がいない」と続いています。
これらの調査結果を見ると、「孤育て」が、悩みを共有できる仲間や頼れる人とつながることができない中で子育てせざるを得ないという、社会的な孤立であることがうかがえます。
参考:株式会社PIAZZA 「孤育てに関するアンケート」調査概要
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000016981.html
子育て環境の変化
かつては、子育ての負担や喜びを家庭の外でも分かち合う機会が、今より身近にありました。祖父母や親戚、近所の人など、周囲の人との関わりの中で、子どもを見守る環境がありました。
その後、産業構造が変わり、都市化・核家族化が進みました。多くの若者たちが生まれ育った土地から離れて暮らすようになり、人の流入が激しい地域では、近所の人との関り合いも薄くなりました。都市圏にやってきた若者は、知っている人、頼れる人のいない環境で子育てをすることになりました。
そんな中、インターネット時代が到来しました。子どもの発達やしつけ、教育など、子育てに関する多くの情報に、誰もが簡単にアクセスできるようになりました。育児の正解に関する情報を、誰もが簡単に得ることができます。しかし、情報は不安を解消してくれるとは限りません。そこに書かれている「理想の子育て」と目の前の我が子との違いに、かえって戸惑うこともあります。初めての子育てで、責任と不安に押しつぶされそうなとき、手をさしのべてくれる人はいません。
さらに、SNS時代となり、子育てをしている人の「上手くいっている例」、「素敵な子育ての例」がたくさんスマホの画面上に表示されるようになりました。そんな写真を見ては、「自分はあの人みたいにできていない」、「うちの子はできていない」と比較し、落ち込むのが日常になっています。正解のないはずの子育ての課題が「自分の努力不足」として、常に目に見える形で表れてくるのです。そして、子どもと二人きりで過ごす日々の中に、その努力を支え、自分の子育てを肯定し、不安を解消してくれる存在がいないのが、今日の子育てなのです。
子どもがほしくないZ世代
BIGLOBEが2024年に実施した、全国の18歳から25歳までの男女500人を対象としたアンケート調査「子育てに関するZ世代の意識調査」によると「将来結婚もしたくないし子どももほしくない」との回答は36.1%、「将来結婚はしたいが、子どもはほしくない」が9.6%と、約5割の若者が「子どもがほしくない」と回答しました。男女別の回答を見ると、男性の51.3%、女性で40.2%が「将来子どもがほしくない」と回答しています。

ビッグローブ株式会社 「子育てに関するZ世代の意識調査」
その理由として、「お金の問題」との回答は17.7%、「お金の問題以外」との回答が42.1%、「両方」が40.2%となっています。経済的な問題以外の理由を8割の若者が挙げています。

ビッグローブ株式会社 「子育てに関するZ世代の意識調査」
子どもを持つことへの不安は、経済的な問題だけではありません。「自分は親になれるのだろうか」「この社会で子どもを育てていけるのだろうか」という、子育て環境そのものへの不安があります。
お金の問題以外で子どもがほしいと思わない理由の最多の回答が「育てる自信がないから」で、52.3%の人が回答しています。
ご紹介したBIGLOBEの調査は、1990年代後半から2010年代初頭に生まれた、いわゆるZ世代、これから子育て世代となる若者たちを対象としています。
今、子育てをしている人たちを見て、これから子育て世代となる若者たちは、この社会では子どもを育てられない、と感じているのです。彼らが選んだ「育てる自信がない」という回答の背景には、親になることへの不安だけでなく、子育てを支えてくれる社会への信頼の揺らぎがあるのかもしれません。
参考:ビッグローブ株式会社 「子育てに関するZ世代の意識調査」
https://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2023/02/230221-1
子どもは社会の宝です。そして、子どもを育むのは社会全体の責任と言えます。子育てを支えてもらえるという信頼を持てる社会を作ることが、いま社会を担う私たちの責任です。
それは、子育ての不安を共有する仲間がいる居場所であり、文字通り手をさしのべてくれる頼れる人の存在です。現代の「孤育て」とは、親が一人で子育てを頑張っている状態ではありません。子どもを育てるという営みを、親だけが背負わざるを得なくなっている社会の姿です。かつての子育てを支える仕組みや関係性が失われた今、次の世代をみんなで育むための新たな仕組みと関係性が求められています。